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4-2:焦り焦られ前途多難

「俺さ、この一週間すげー忙しくて」 「……ふーん」 「寂しかった?」 「誰が!」  思わず声を上げてしまい、慌てて口を押さえる。  ご飯時にこんなの、行儀が悪い。  でも、ちょっとほっとしている自分がいた。  別に飽きたわけでもどうでもよくなったわけでもないらしいと知ったせいで。 「寂しくなかったのかよ」 「静かに過ごせて快適だったけど?」 「なんだよ、つまんねー」  子供みたいに拗ねながら、菅原も食事を進める。  寂しかったって言って欲しかったんだろうか?  もし私がそう言ったら、こいつはどんな反応をしていたんだろう。  馬鹿にして笑うんだろうか。それとも、「俺も」なんて言って……。 「……っ!」 「お前、なに赤くなってんの?」 「なんでもない!」  変なこと、考えた。  一週間前にあれこれいやらしいことをされたせいで、どうも菅原を前にするとおかしくなってしまう。  それまではただの嫌いなやつだったのに、今はもっともっと嫌いなやつだ。  ……私のことなんてなんにも考えてくれないし。 「にしてもからあげかー……」 「なに、文句あんの」 「いや、好きなのかと思って」 「うん、好き」 「っ!」  味噌汁を飲もうとしていた菅原が吹き出しそうになる。  幸い、こぼれることはなかったけれど。 「汚いでしょ、やめてよ」 「……おう」  なんでかはわからないけれど、思いっきりため息を吐かれた。  ほんとになんなの、こいつは。 「そっか、からあげ好きか……」 「弱みでも握ろうっての? そうはいかないからね」 「なんでそうなるんだよ」 「あんたの考えてることなんかお見通しなんだから」 「……だったらよかったのになー」 「どうせ変なことばっかり考えてるんでしょ。……え、エロいこと、とか」  声が小さくなったのは場所もあったけれど、必然的にされた様々なことを思い出してしまったからだった。  心臓がばくばくし始めて、菅原を見ていられなくなる。  だからこいつが側にいるのは嫌なの。  動揺しているのを悟られないように、おいしいおいしいからあげに集中する。 「……パスタとか、そういうのじゃねーんだな」 「ん?」 「飯、今度連れてってやるときはからあげあるとこにしようと思って」 「ついていかないから考えるだけ時間の無駄よ」 「えー」  もう、ついていかない。  行ってみたかったなーなんてホテルを取ったって言われても、ものすごくおいしいものがあるって言われても、絶対絶対、こいつとは仕事以外で過ごさない。  ……そんな付き合う手前みたいなこと、絶対しない。
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