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4-1:焦り焦られ前途多難

 さすがに落ち着いたのか、それとも飽きたのか。  それ以来、菅原は私に変なちょっかいをかけてこなくなった。  ほっとするのはもちろんだけど、なんとなく落ち着かない気もして気分が悪い。  発散したいようなそうでないような。誰かに言いたいような絶対言いたくないような。  ぼかしつつ美波に相談してみようかと、声をかけてみる。 「美波、今日ご飯行かない?」 「ごめーん、締切近くて!」  残念。美波に話せないなら、他の誰にも話せるわけがない。 「わかった。それじゃ、一人で行ってくる」 「他の子誘えばいいのに」 「菅原のことで愚痴りたかったの。他の子だったらひっぱたかれるでしょ」 「うわぁ、ありえる」  この会社にはとんでもないことに菅原ファンの女が溢れている。  ここまで嫌っているのは私ぐらいだし、それを言える相手は美波だけしかいない。  というか、むしろ私は他の女性社員にあまりよく思われていないぐらいだ。  もちろん、ことあるごとに菅原がちょっかいをかけてくるせいである。  今まで何度「いいよね、菅原くんに構ってもらえて」「でも勘違いしない方がいいよ?」なんて嫌味っぽいことを言われてきただろうか。  散々ひねくれていると言われた私より、彼女たちの方がよっぽどひねくれているし、やり方が怖い。  うまく立ち回っているつもりではあるものの、もしこの状況が変わったら……。  そんなこと、考えたくない。  美波がいないなら、と一人で食堂に向かう。  別にかっこつけておしゃれなカフェに行く必要なんかなかった。  私は食堂のからあげ定食で充分。  揚げたてのからあげなんて家じゃ食べられないしね。  飲み会でもなんとなーく頼みにくい雰囲気があって、気軽に、そして存分に楽しめるのはこの食堂だけということに……。 「この席、座っていーい?」 「よくない」 「さんきゅー」 「よくないって言ってるんだけど」  勝手に座ったのはもちろん菅原。  仕事以外で話しかけてきたのは……一週間振りくらいだろうか? 「うっわ、お前から定? 他の女見習えよ。みんなサラダとか食ってるぞ」 「それじゃお腹に溜まらないでしょ」  そう言う菅原はメンチカツ定食らしい。  私がからあげ定食の次に好きなメニューだ。面白くない。 「ひと切れやるから、からあげ一個ちょーだい」 「やだ」 「今日、いつにも増して意地悪だなー」 「……ご飯くらい静かに食べさせてよ」  これが本格的なお昼の時間じゃなくてよかった。  更に言えば、どこぞのカフェじゃなくてよかった。  そうじゃなかったら、菅原と二人でランチ――しているように見えるこの状況は危険極まりない。  下手をすれば昼休憩の後に私の席がなくなっているまである。
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