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3-4:こじらせ狼の弱音

 昼休みを終えて仕事に戻っても、いつもと違ってどうも集中できない。  今は大きな案件を抱えていなくてよかった。じゃなかったらどんなミスしてたかわからない。 「資料室行ってくる」 「あ、じゃあ頼んでいい? 行く暇なくてさー」 「別にいいけど、高くつくぜ」 「ケチだなー、菅原」 「うるせ」  同僚と笑い合ってから、いくつか資料を持ってくるよう頼まれる。  ちょっとはいい気分転換になるだろう、とオフィスを出てエレベーターへ向かう。  資料室があるのは地下二階。資料室以外には電源室やらなんやらしかなくて、人の気配もなく薄暗い。  こんな誰もいないところで浅木がいたらなー、なんてよからぬことを考えながら資料室に入ってみたら。 「……げ」  あからさまに俺を見て嫌そうな顔をしたのは浅木だった。  警戒したように身を引かれたけど、俺は素直に嬉しい。 「なに、お前も資料探し?」 「関係ないでしょ」  相変わらず浅木は俺にだけ冷たい。他のヤツだったらもう少し愛想のいい態度を取るくせに。 「なぁ、昨日の」 「私、もう行くから」  俺を遮るように言うと、浅木は資料室を出ていこうとする。 「待てよ」  思わず、その手を掴んでいた。 「そんな逃げなくてもいいじゃん?」 「べっ、別に逃げてなんか」 「じゃ、もうちょっと話そ?」 「仕事中でしょ。余裕のある人は遊んでられるのかもしれないけど。おあいにくさま、私は忙しいの」  振りほどかれそうになって手に力を込める。  知らないだろ、お前。  今二人きりで俺が喜んでること。 「お前、なんでそんな強気なの? ベッドの上だとあんなにしおらしいくせに」 「だっ、誰が!」 「今と全然違う声出すし、俺にたっぷり感じてくれるし? あの志津ちゃんはどこ行っちゃったわけ」 「へ……変なこと言わないでよ。そんなのもう忘れたからっ……!」  浅木の顔が真っ赤になっている。そんな顔で忘れたと言われても信じられるわけがない。  だから、もっといじめてやりたくなった。 「俺は忘れてねーけど?」  耳元で囁いて、そっと資料室のドアを閉める。  そのまま浅木を腕の中に閉じ込めて、背中を壁に押し付けた。 「ちょ、ちょっと、ここがどこだかわかって……」  抵抗される前にキスで唇を塞ぐ。  警戒してくるくせに、こいつ、どっか鈍いよな。  俺に捕まったらこうされることぐらい、わかってただろ? 「や……あっ……んン……」 「……お前、その声反則」  もがくくせに力が入ってない。  キスされて身体に力が入らなくなるなんて、ネタかなんかだと思ってた。  でもあれなんだな。思ったより、クる。 「ばか……誰か、来たら……」 「じゃ、奥行く?」
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