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1-5:ひねくれ処女の強がり

「はぁ!?」  うっかり飲もうとしていたお茶を吹き出しかける。  なんでこいつにいきなり、そんな気持ち悪い質問をされなくちゃならないの。 「それ、あんたに答える必要ある? ないでしょ? ないよね。はい、この話はおしまい」 「ふーん。いねーんだ」 「いましたけど?」  ほとんど反射的に言ってしまう。  ――まぁ、間違いじゃない。最後にいたのは大学時代でそれっきり、なんて言う必要はないし、そこでもこの性格がたたって手を繋ぐのが精一杯だった、なんてことも言わなくていい。  ……だって、手を繋いで歩くなんて恥ずかしいじゃない。  キスだって知らない。もちろんその先だって。  でも、こいつにだけは知られたくない。 「……どんな男?」 「……関係ないじゃん」 「ありますー。お前のぱっとしない原稿の理由を知りたいんですー」 「絶対言わないから」 「へぇ」  にや、と菅原が拳をお見舞いしたくなるような笑みを浮かべる。 「そうやって言うけどさ、実際いなかったんだろ?」 「いたって言ってるでしょ!」 「じゃ、どんな奴? ほんとにいたなら言えるよなー」  ああ、どうしてこんな小学生みたいな人なの。  もっともっと腹が立つのは、こんな分かりやすい嫌がらせにいちいち反応してしまう私自身。 「じゅ……十人くらいいたし……!」 「十ってお前……」  ぷっ、と菅原が吹き出した。なんでそこで笑うの? 笑うとこあった? 「そんじゃ、あっちの方も百戦錬磨って?」 「なっ……!」  あっち。そんな曖昧な言い方でも理解してしまう。  嫌がらせのレベルがついにセクハラにまで達するなんて。……ううん、セクハラ自体は今までも何回かされてたけど。馴れ馴れしいだけならまだしも、ここまで来ると本気で訴えたくなる。 「へ、変なこと言わないでよ!」 「別にー? 子供じゃねぇんだし、こんなので照れんなよ」 「っ……!」 「……今も彼氏、いんの?」  ほんの少しだけ菅原の声のトーンが変わったような気がした。  なんでそんなことにこだわるのか。また馬鹿にしたいのか。  いると言おうとしてやめておく。どうせまた面倒な質問が飛んでくるだろうし。 「今はいないけど」 「へー、フリーなんだ」 「……だから何?」 「俺もフリーだよ。どう?」 「はぁ? どうって……頭おかしいんじゃないの?」 「本気本気。志津ちゃんかわいーから」 「ふざけないでよ。あんただけは例え親に頼まれても絶対やだ」  これ以上付き合っていられない。ぱっぱと空っぽのお弁当箱を袋に押し込んで、すぐに立ち上がった。  まだランチタイムが終わるまで時間はあったけれど、適当にデスクで時間を潰せばいい。そう思って菅原のことなんか気にせず戻ろうとしたとき。 「――なぁ、彼氏がいたって嘘だよな」
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