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1-4:ひねくれ処女の強がり

 昼休みが来た。美波とランチに行く予定だったのに、こういうときに限って邪魔が入る。どうやら取材先でトラブルが発生したらしい。電話口から聞こえてくる申し訳なさそうな声さえかわいいのだから、まぁ、私には許す以外の選択肢がない。  だから、今日は一人でコンビニ弁当。  どうせ誰もいない屋上へ足を運んだ。いい天気だし、気温も涼しくて過ごしやすい。何より一人で寂しくランチしている所を誰にも見られない。これは重要だった。  だって、面倒な上司に絡まれることも、鬱陶しい男に付きまとわれることもない。  そのはずだったのに。 「……よ、お前もここで飯?」 「……あんたがいるならデスクで食べる」 「つれないねぇ、志津ちゃん」  さあ食べようとお弁当の蓋を開いた瞬間、食欲も何もかも奪っていく憎たらしい顔が目に入ってしまった。あろうことかそのままこっちまで近付いてくる。  本当に場所を変えようと立ち上がりかけたけれど、中途半端に蓋を開けていたせいでお弁当がひっくり返りそうになった。慌てて座り直すと、菅原が楽しそうに笑っている。  ちょっと笑うだけで人の神経を逆撫でするのだから、本当にすごい才能だと思った。 「俺も一人なの。一緒に食べよ?」 「気持ち悪い喋り方しないで」 「志津ちゃんはなんで俺にだけそんな冷たいのかね」 「名前で呼ばないで。あんたとは友達でもなんでもないんだから」 「小坂には呼ばせてるじゃん。俺も同僚なんだしいいだろ?」 「ご飯食べに来たなら黙って食べてよ。あんたとお喋りしたい気分じゃないの」 「イジワル」  拗ねたように言うと、菅原は許してもいないのに勝手に隣に座った。距離はペットボトルが一本分。あとひとケース分空けてもまだ足りない。同じ空気を吸うだけでも胸がむかむかする。  移動するか、しないか。考えてからここに留まることに決める。よくよく考えれば、こいつの方が後から来たのになんで私が動かなくちゃいけないのか。ここは今日私がランチを楽しもうと決めた場所。こんな男にとびっきりの青空も、気持ちいい風も横取りされたくない。  黙って、と言ったおかげで菅原はよく回る口をようやく閉じてくれた。  どうやらこいつもコンビニで買ってきたらしい。焼きそばパンと、クリームパン。食べ合わせがいいとはとても思えない。……でも、どっちも私の好きなパンだった。それさえ気に入らない。  こうなったらさっさと食べ終わってしまおう。それなら問題ない。そう考えて黙々とお弁当に手をつける。  冷たい白米、冷たい唐揚げ。こんなことなら温めてくればよかった。嫌な奴が横にいるだけで砂を噛んでいる気分だ。 「……浅木ってさー」  黙れって言ったのに。人の話を聞くことができないのか、それとも黙っていると死ぬ星から来た人なのか。 「今まで彼氏、いたことあんの?」
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