28 / 50

2-12:逃げられない二度目の夜

 言っちゃった。言ってしまった。  完敗だ。  だって欲しいなんて言うから。私を欲しいって言ってくれたから――。 「……ん」  ずしりと菅原が私に体重を預けてくる。  ああついにその瞬間が……なんて思っていたのに。 「……菅原?」  今、聞こえてくるのは……寝息じゃないだろうか。 「菅原? ちょっと」 「んー……」 「……嘘でしょ」  私が一大決心をしておねだりしたのに、こいつはあろうことかぐっすり寝ていた。  若干顔が赤くなっているのを見て嫌な想像をしてしまう。 「あんた……まさか酔ってたの?」  私もまぁ多少は酔ってたと思う。  というか、そういうことにしてしまおう。  それなら「あんたならいい」なんてふざけた言葉もお酒のせいって言える。  うん、私は悪くない。たまたま、そう、気の迷い。  お酒が私をちょっとおかしくさせて、菅原のこともおかしくさせただけ。 「……バカ」  すっかり寝落ちしてしまった菅原の身体を押しのけて、なんだかむなしい気持ちになりながらベッドに座る。  中途半端にいじられた身体はぐずぐずになるくらい熱く溶けていた。  でもそれを慰めるはずだった男は酔ってぐっすり。 「さいっあく……」  もう他に言葉が見つかるはずもない。どう考えても最悪でしょう、こんなの。  せめてこういうときに酔って中断させるのって女の方じゃないの?  それで男が悶々として、なんていうのが鉄板ネタだと思っていた。なのに今は完全に立場が逆になってしまっている。  ものすごく間の抜けた顔で眠る菅原の頬をつついてみる。  散々イケメンだのなんだのもてはやされても、寝顔は割とかわいいらしい。  ……それを知ってる人がどれだけいるのか、考えるとちょっと憂鬱な気持ちになる。  こいつは今までにも私みたいに誰かに手を出してきて、こんな夜を過ごしたんだろう。その誰かならあんまりお酒を飲ませすぎなかったかもしれない。最後までできるように量をセーブしたのかもしれない。  ああもう、なんでこんなこと考えなくちゃならないんだろう。  したかったわけじゃ、ない。こいつに抱かれたかったわけじゃない。 「……処女なんてめんどくさいだろうしね。これでよかったのかも」  吐いたため息は菅原の寝息に混ざって聞こえなくなった。  なんとも言えない苦い気持ちはきっと、狼になるはずだった男が子供みたいに寝てることへの呆れ。  ……抱かれたかったわけじゃない。  なんで私がそんな風に思わなきゃいけないの。  こいつは意地悪で、すごく嫌な奴で。それなのに。  ――俺はお前が欲しいってずーっと言ってる。 「……だったら寝てないでもらってよ」  菅原の嫌いな場所がまた一つ増えた。  私の覚悟をめちゃくちゃにして呑気に寝るところ。  ……一瞬だけでも、私の心を揺さぶったところ。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!