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1-3:ひねくれ処女の強がり

「お前、文章が男くさい。こんな淡々と事実だけ書いてあっても面白くねーし、そもそも記事の内容自体ありきたりでぱっとしない。せめてこう、感情に訴えるとか、女心をくすぐるとか、なんかそういうのないのかよ」 「どうせ男くさくて女らしさなんてこれっぽっちもありませんけど、菅原さんに何か迷惑でもかけてるんですかねー……?」 「嫌味な敬語だな、ほんと」  笑われてますますイライラする。  それなのに、喋っている内容も知らずに遠巻きに見る女性社員たちはなんだかきゃっきゃと騒がしい。  菅原は仕事ができる。これはもう私も千歩くらい譲ってそうかもねと言うしかない。  そして――美波に言わせると、合コンに行ったら女子全員が即お持ち帰りしたくなるような美形、らしい。  確かに、まぁ顔は整って見える。なんとなく清潔感はあるし、私より二十センチ以上の長身も、それを無駄にしない細身も女性受けはするのだと思う。もしかしたらスーツを脱げばそこそこ引き締まった身体をしていて、腹筋も割れているのかも。……想像するだけで嫌な気持ちになる。  例えどんなに格好よかろうが、どんなに仕事ができようが、年収が一億を超えていようが石油王だろうが、私がこいつをいい意味で認めることは絶対にない。  だって、こいつは性格が悪い。事あるごとにねちねちと何か言ってくるし、馴れ馴れしく肩に手を置いてきたりもする。セクハラだと言った時の嫌そうな顔は気分がよかったけれど。 「なんで自分のデスクから一番遠いのに、わざわざこっちまでちょっかいかけに来るわけ? 暇なの?」 「おー、すげー暇。お前の相手しに来てやるくらい暇」 「どこまでも人を苛立たせる天才ね……」 「そりゃどうも。お前に褒められるといい気分。今日も一日頑張れそう」  最後の最後まで私の神経を逆撫でして、やっと菅原は自分のデスクまで戻ってくれた。いや、戻るというのは正しくない。出社してあいつはまっすぐこっちに来ているのだから。  本当に暇なのかと毎日疑問に思う。それとも、あいつのタスクには『浅木志津に嫌がらせをする』というものが組み込まれているのか。どれだけ考えても私にはわからない。 「相変わらずだねー、菅原くん」 「……美波、逃げたでしょ」 「あはは、だって入り込めないよ。二人とも仲良しでいいなぁ」 「仲良し!? どこが!」  そんなことは天地がひっくり返ってもありえない。  あんなやつと仲良くなるぐらいだったら、腐った死体と駆け落ちした方が千倍マシだった。
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