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2-10:逃げられない二度目の夜

「ほんと、お前かわいーよ」  その言葉がやけに甘く優しく響いて泣きたくなる。  なんでこいつにそんなことを言われて、ちょっとでもどきっとしてしまうんだろう。こいつのことは嫌いなはずなのに、肌を晒すと心まで変わってしまうのだろうか? 「志津、もういい?」  なにが、なんて言わなくてもいい。なにを望んでるのか痛いほどわかってる。  前みたいに嫌だって言えたらよかったのに。本気でこいつの腕から逃れようと思えたらよかったのに。  ——どうして私は、菅原の背中を抱き締めてるの? 「あんたに抱かれるのなんて、嫌」  言葉と行動が噛み合わない。それをわかってるから菅原も笑ったんだと思う。 「ひねくれてるな、お前」  菅原は笑いながら囁く。どうしていちいち耳元で話すの。こっちはあんたの声だけで溶けそうだっていうのに。 「いいよ、じゃあまだ我慢する。お前が俺を欲しいって言うまで」 「一生……我慢することになるでしょうね」 「なに、一生付き合ってくれんの?」 「そんなわけないでしょ、バカ」  会社でもプライベートの時間でも、いつも人を小馬鹿にするような言動を繰り返してきた奴なのに。ベッドの上だと子供っぽく笑うのが気に入らない。  一生、なんて子供騙し、男のくせに信じないでよ。 「今夜言わせてやるよ。俺がお前を欲しいから」 「……ッ、ん」  ずっと動かずにいた指が存在を思い出させるようにまた動き出す。  さっきよりはゆったりした動きで。でも的確に私の弱い場所を探り当ててきて。  そんなところ触らないで、なんてもう言えなかった。  頭がぼうっとする。ひっきりなしに自分が声を上げているのがわかった。私は、こいつに感じさせられている。 「そこ、ばっ……か……あっ……あ、んん」  菅原はなにも言ってくれない。ただ、ひどく熱っぽい目で私を捉えたまま、指の腹で私の中をこする。  恥ずかしい場所を舐められるよりこっちの方がずっと恥ずかしい。だって、菅原がずっと私を見てる。私がバカみたいに感じるところを見て——笑ってる。 「見ないで……っ」 「……最初のときとおんなじこと言うのな。俺に見られんの、そんなに嫌?」 「やだっ……」 「でもさ、前より今のが締まってる」 「ん、んン……ぁ」  感触を理解させるように、ゆっくり指を引き抜かれる。その刺激にまで声が漏れて、また菅原が笑った。  笑わないでよ。惨めになる。嫌いな奴なのに感じさせられてるなんて、情けないじゃない。普段あんなに嫌いだって言ってるのに、これじゃあんたを好きみたいじゃない。  目の前に私のものでどろどろに濡れた指を見せつけられる。  ……私、こんなに。
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