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2-7:逃げられない二度目の夜

 そして私は菅原と共にホテルまで来てしまったわけだけど。 「……すっごーい!」 「……あのな」  そこはとびっきりのスイートルームだった。  大きすぎる窓の外にはきらびやかな夜景。ベッドはキングサイズで、枕元にはムードのあるランプが付いている。全体的に部屋が薄暗い事がもう、この部屋の値段を示している気がした。  庶民は眩しい場所できゃっきゃはしゃいでなさい、セレブはこういう所でしっとり夜を過ごすんです。  そんな事を部屋そのものに言われているような気さえしてしまう。  置いてある調度品もきっといいお値段なのだろう。私はあんまり家具に興味がないからよくわからないけれど。  大理石のテーブルにはメニューが広げられていた。何となく表紙を見ると、いくつかのお酒の名前が書いてある。  私がさっきまで飲んでいたような子供じみたカクテルの名前はもちろんない。どれもワインの名前ばかりで、正直、どれがどういう物か、そもそも赤がどれで白がどれかすら私にはわからなかった。 「お前、スイートルームだって言ったらあっさりついてきやがって」 「だってここ、めちゃくちゃ有名でしょ? こういう所に泊まるの、夢だったんだー!」  広い部屋の真ん中でくるくる回ってから、べたっと窓に張り付いてみる。  うん、どうやら私はものすごーく酔っているらしい。頭がふらふらして、窓の冷たさが心地よい。  ぼんやりする頭をもっと冷やしたくて額を窓に押し当てる。必然的にきらきらした夜景が視界に入った。  エレベーターでだいぶ上まで上がってきたという事は、その分グレードも上の部屋なのだろう。どうりでよく夜景が見えるわけだ。 「あんたもこういう場所を取ったりできるのね」 「ホテルの部屋ぐらい取れるっつの」  そういう意味じゃなくて。  こういう素敵な場所を知っているというのが意外だった。さっきのバーでもちょっと思ったけれど。  菅原は誰かとこういう場所に来たことがあるんだろうか? 彼女ができたらあのバーに連れて行きたいとは言っていたけれど、ここのホテルもそういう――。  私の思考がそこで止まってしまったのは、後ろから抱きしめられたせいだった。  せっかく頭が冷え始めていたのに、またかっかと熱がのぼってくる。 「ご褒美は?」  憎らしいくらいいい声が耳元で囁いてきた。  こいつ、性格だけは本当に救えないくせに、顔と声は一級品なのがむかつく。いいや、認めるものか。認められるわけがない。一級品じゃない、二級品以下で売り場にも出ない扱いをしてやる。私の中で、だけど。 「誰のために用意したと思ってんの?」
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