5 / 5

第5話

遺骨でダイヤモンドが作れることを知ったのは、私が身寄りのない彼の骨だけ遺されて途方に暮れていた日のことだった。 彼の遺した財産のほとんどすべてをつぎ込んで、膝に乗せられるほど大きかった彼を、たった0.2カラットの歪な宝石に変える。その青とも透明ともつかない不思議な石を指輪に埋め込んでもらって、その日から私は彼の墓標になった。 私の左手の薬指は、永遠に忍のもの。それは私の犯した罪の贖罪でもあり、弱い私の救いでもあった。 22歳の夏。あの人と籍を入れてから、4か月も経たないある日のことだった。 目の前の男は、感情の読めない無表情で私を見ていた。 本当に、その人だと思う? その質問の返答に詰まりながら、彼を警戒しながら。私は込みあげた唾液を呑み込んだ。 「……ごめん。これ持ってる人、珍しいから。変なこと聞いたわ」 ふっと息をついて、彼はさっと背を向けた。私は、そのシャツに咄嗟に手を伸ばした。 「待って!」 彼は目を見開いて私を振り返る。当然の反応だ。私もどうしていいのかわからない。けれど。 「私、あなたと話がしてみたい」 「……めそめそ慰められたいなら」 「違うわ」 男は口を噤む。私は息を吸って、はっきりと言葉を放つ。 「一人の夜が嫌なの。あなたのそれも大切な誰かなら、少しはわからない?」 男はやっぱり感情の読めない瞳で私を見下ろした。 「夜伽の相手をご所望か」 呟くように吐いた口が、僅かに口角を上げる。 「夜を凌ぎたいなら、ちょっと待ってな。あと一時間でシフトが終わる。駅前に行けばカフェでもなんでもあるだろ」 フロントに戻った男が、カウンターから紙とペンを差し出した。連絡先を書くと、その手が追い払うようにぶらぶらと揺れた。 ありがとうございました。無機質に響く自動ドアを抜けると、空は橙と紺が混じったような色をしていた。ネオンの中を抜けながら、私は自分の行動を振り返る。 読めない男だと思った。普段なら、きっと関わりもしないであろうタイプの男だ。今さら小さな不安が襲ってきて、私は指輪を握りしめた。 あの男にも、自分が永遠を捧げてもいいと思える相手がいたということが、何だか不思議だった。
スキ!
スキ!
スキ!
スキ!
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

様々な恋のカタチ。カクテルがなぐさめ、はげまし、ときには突き落とす。カクテルな恋、あなたもいかが?
1
1
連載中/13話/37,370文字/20
2018年4月29日
あなたの指で、唇で、私を壊して欲しい。
連載中/26話/31,970文字/0
2019年2月2日
お前は黙って俺に愛されてろ
連載中/19話/15,071文字/0
2018年4月11日
地味系初心者女子×チャライケメンの恋
1
4
完結済/7話/13,030文字/47
2017年9月17日
両片思いなのに、不器用な二人の一冬のエロ甘なお話。
2
完結済/5話/10,000文字/20
2017年10月28日
過去世から繋がる宿命、そして、絡み合う因縁の糸が、青年と少女を翻弄する――
連載中/20話/12,596文字/0
2020年1月31日