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第4話

夕方。目隠しの向こうにある入り口に足を踏み入れる。部屋の内装を示した光るパネルの前を抜けてフロントに近付くと、中から男の声が聞こえてくる。 「ご利用にはまずパネルで部屋を選んでください」 「あの、昼間に電話した者で……忘れ物を取りに……」 手元にだけ穴の開いたカウンターの向こうで、あぁ、という声がした。指輪ですね、という声に、そうですと何度も繰り返す。 そのままカウンターで渡されるのだと思っていると、不意に隣のドアが開いて男が現れた。長身で、色素の薄そうな茶髪に眠そうな顔。シンプルなワイシャツに黒いスラックスはここの制服だろうか。彼の細い体躯に、よく似合っていると思った。 「指輪、これですよね」 すらっとした指に摘ままれていたのは、まぎれもなく私が探していた指輪だった。 「そうです! ありがとうございます!」 差し出した手に指輪が載せられるや否や、私はそれをすぐに薬指に戻した。青灰色の石が埋め込まれた、シンプルなシルバーの指輪。いつもの場所にあるだけなのに、いっそ涙が出そうだった。嬉しさのあまり薬指ごと指輪を握りしめる。 目の前の男が首を掻く仕草で私は我に返った。 「あ、す、すみません……」 思わず謝罪の言葉が口をついて出てしまったが、そもそももう用事は済んでいることに思い当たる。しかし、男は何か言いたそうに私を見ていた。何となく気まずさを覚えながら、男の顔を覗き込むと、ゆっくりと男が口を開いた。 「それは、旦那さんですか」 ぎくり、と肩が跳ねた。それが指輪を指していることは瞬時に理解できた。けれど、何故、という感情の方が大きかった。 「本当にそれがその人だと思います?」 「どういう……」 意味でしょうと、問いかけかけた唇が動きを止めた。視線の先に、見覚えのある青灰色の石。彼の右手の人差し指には、私のものとよく似たデザインの指輪が光っていた。 「あんたのそれも、遺骨から作った石なんだろ?」 その声は、私の耳によく響いて、離れなかった。
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