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第3話

(……やっちまった)  嫉妬心から半ば無理やり抱いてしまった。しかも一度では足りず、ベッドに場所を移して二度、三度と。  ただでさえダメ男なのに、これではダメのダメ押しだ。  きっとミサの心はますます浮気相手に傾いたに違いない──と、裸のままベッドに腰掛けて後悔していると、 「あっ、そうだ!」  同じく全裸のミサが子鹿のようにぴょんと跳ねて、クローゼットを開く。 (そこはっ)  ギョッとした俺に構わず、ミサは明るく「はいっ」と何かを俺に差し出した。 「もう零時回ったから、あげる! ハッピーバレンタイン!」 「……へ?」  膝に置かれたのは、間違いなく、事の発端となった忌々しい紙袋だった。  何が起こったのかわからず、しばらく言葉を失う。 「……これ、俺に?」 「うん!」 「俺、甘い物食べられない……」  呆然と顔色を窺うと、ミサはきゃらきゃらと笑った。 「大丈夫! これ、甘くないチョコレートなんだ」 「……はい?」  予想していなかった展開に頭がついていかない。  無様に固まった俺の横に腰掛け、ミサが得意げに説明する。 「今年ね、このお店が砂糖不使用のビターチョコを扱ってるって知って、これならたっちゃんも食べられるぞって思ったの。やっぱりせっかくのバレンタインデーだから、お酒だけじゃ雰囲気出ないし……」  一瞬口ごもってから、恥ずかしそうに付け加える。 「……最近、いろいろマンネリしてた気がして。たまには恋人っぽいこと、たっちゃんとしたかったの」 「っ」  思わず、目の前の体を強く抱きしめていた。ぴったりと密着した肌から、馴染んだ体温が伝わってくる。 (……俺、勝手に疑って、怒ったり悲しんだりして……。ミサはずっと、俺のことを見ててくれたのに) 「でも何だか今日は、付き合いたての頃みたいだったね? 私、ドキドキしちゃった」  嬉しそうに目を細めるミサに、俺も微笑み返す。  勝手に浮気を疑った罪悪感はもちろんある。だけど、思い出せた。ミサがとても大事だということを。愛しているんだってことを。 「いつだってドキドキしててくれよ。ミサに毎日ときめいてもらえるよう、俺、頑張るからさ」 「ええっ、やっぱり何か変! ……でも嬉しいな。じゃあとりあえず、ホワイトデーもロマンチックにお願いねっ」  上機嫌なミサに任せとけ、と返しながら、ホワイトデーのお返しは給料三ヶ月分の指輪だろうか、と早くも考えを巡らせた。
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