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第1話

 ──見つけてはいけないものを、見つけてしまった。  寝室のクローゼットの奥、隅の方にひっそりと隠されていた小洒落た紙袋。  見覚えの無い袋には、俺でも知っている有名な菓子メーカーのロゴが入っている。手に取って中身を覗くと、明らかに贈答用の包装紙に包まれ、高級感のあるゴールドのリボンが掛かった箱が、恭しく収まっていた。 (どう考えても、バレンタインチョコ、だよな……)  今日は二月十三日、バレンタインデーの前日だ。時期を考えればこれは、同棲している恋人・ミサが買ったバレンタインチョコに違いない。  ただ、たったひとつの、しかし非常に重大な問題がある。 (俺、チョコは食わないって、ミサも知ってるのに)  付き合って三年、同棲して二年。もはや老夫婦のような落ち着きと倦怠が漂う間柄だ、お互いの好みなどとっくに把握し合っている。  バレンタインデーには毎年、甘いものが苦手な俺のために、ミサが日本酒を買ってくれる。それを「オヤジ臭い」と笑いながら二人で飲んで酔っ払うのが、いつものバレンタインの過ごし方で、今年もそうなると疑ったことすらなかったのに。 (このチョコ……誰に贈るんだよ……)  俺宛てではあり得ない。  明らかに本命用の高そうなチョコレートを、彼女は誰に送るつもりなんだ。  ──俺以外に、好きな男ができたのか?  その可能性に思い当たった途端、地面がグラリと揺れたかのように目眩がした。
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