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白いキャンパスを淫らに汚して

「絵のモデル、ですか?」 「そうなんです、探しているんですがなかなか見つからないんですよね」  先生の部屋で頼まれた資料の整理を手伝っていると、困った表情で先生は言った。  絵の、モデル……。 「それって誰でもいいんですか?」 「え?」 「例えば……私とか」  願ってもいないチャンスだと思った私は、何気ない風を装って先生に提案した。一瞬戸惑ったような表情を見せた後、あなたですか……と先生は呟く。 「ほ、ほら私先生にはよくお世話になっているじゃないですか! だから、そのお礼というか……」  美術が得意じゃないのに、この科目を取ってしまった私は課題の度に先生に泣きつき、コツを教わりなんとか及第点をもらっていた。そもそもどうして美術が苦手なのにこの科目を取ったかというと……入学式の日に先生に一目ぼれしたことが原因だった。  一年の頃から少しずつ距離を縮め、今ではこうやって資料の整理を頼まれるぐらいの仲にはなったけれど、相変わらず教師と生徒という関係に変わりはない。あと一歩、できればあと三歩ぐらいは関係を進めて、例えば名前で呼ばれるぐらいのお気に入りになりたい。それには何かきっかけが必要だった。  今回のモデルが是非そのきっかけになれば、という淡い期待と野望がバレないように「まあダメならいいんですけどー。暇だから……」なんて思ってもいないことを言いながら先生の様子を見る。  ……困った表情だ。これはダメかもしれないな……なんて思っていると、先生はふっと表情を和らげた。 「そう、ですね」 「え?」 「では、お願いしてもいいですか?」 「いいんですか?」 「はい、よろしくお願いします」 「わ、わかりました!」  思わずガッツポーズをしそうになる腕を必死に抑えると、私はポケットからスマホを取り出した。 「いつが都合良いですか?」 「そうですね、連続して描きたいので……ああ、この三連休はどうですか?」  そう言って机の上にあったカレンダーを指差す。私のカレンダーにもそこは特に予定が書かれていなかった。書かれていたとしても……きっと断らなかったと思うけど。 「大丈夫です! それじゃあ今週末、楽しみにしています!」 「こちらこそよろしくお願いします」  優しく微笑んでくれる先生に、胸がキュンとなるのを感じながら私はスマホのカレンダーにハートマークを打ち込んだ。 ***  待ち遠しく思っていたけれど、いざその日が来ると緊張で胸が痛い。 「ここで、あってるよね?」  先生から指定された場所に行くと、高そうなマンションが立っていた。ここに、住んでいるというのだろうか……。  教えられた番号を押すと、機械の向こうから先生の声が聞こえた。 「はい」 「あ、あの三橋です」 「ああ、鍵を開けるから少し待っていて下さい」  ピーッという電子音がして、目の前の扉が開いた。エレベーターで六階に行くと、扉の前で先生が待ってくれていた。 「迷いませんでしたか?」 「大丈夫です!」 「寒いですね……。部屋を暖めておいたので、中に入りましょう」  先生の後をついて部屋に入る。男の人の一人暮らしというと雑然とした部屋を想像するけれど、先生の部屋は大きなキャンパスがあるだけで綺麗に片づけられていた。 「あまり見ないでくださいね。どうしても散らかってしまって」 「そんな風には見えないです!」  と、いうより私の部屋より綺麗だ。確実に。 「三橋さんが来るので片付けたんですよ」  そう言って先生は笑う。 「では、さっそくですが初めてもいいですか?」  私が荷物を置くと、小さな椅子を持ってきて先生は言った。 「は、はい! ここに座ればいいんですか?」 「はい。服を脱いで、ここに座ってください」 「え……? 服、を?」 「言ってませんでしたか?」  言葉に詰まった私に、先生は不思議そうな顔を見せた。 「モデルはモデルでも、今回のモデルはヌードモデルをお願いしたいんです」  そんなことは今初めて聞きました、という私の心の声が聞こえたのか、先生がどうしましょうと困った表情で言った。 「言ってなかったようですね……。 すみません、三橋さんが嫌だと言うのなら別の方を探すので……」 「や、やります!」 「え?」 「私、ヌードモデルやります!」  別の人にされるぐらいなら……! だって、モデルとはいえこの部屋で裸の女性と先生が二人きりなんて……そのままそういう関係にでもなったりしたら、後悔してもしきれない!  それなら少し恥ずかしいけど、私がしたほうが何百倍もマシだ! 「大丈夫ですか?」 「はい! ただ……ちょっと恥ずかしいので、脱ぐあいだは後ろを向いててもらってもいいですか……?」 「それは大丈夫ですが」  先生が後ろを向いたのを確認すると、私はコートに手をかけた。次にブラウス、スカート、そして……下着。  部屋は暑いぐらいの温度だったから、裸になっても寒いということはない。ただ、恥ずかしいだけで……。 「っ……」  最後の一枚を脱ぐと、私は一糸纏わぬ姿になった。あとは先生に準備できましたと言うだけ……。 「……せ、んせい」 「はい」 「脱げ、ました」 「振り向いてもいいですか?」 「……はい」  先生が振り向くと、その視線が私の身体に向けられるのが分かる。  恥ずかしい……。  けれど、先生は特に気にしていない様子で 「では、座ってください」  と、言ったかと思うと近くの棚からデッサン用らしい鉛筆を取り出した。 「三橋さん?」 「あ、はい!」  その態度に少し傷付いたけれど……私は促されるまま指定された椅子に座った。 ***  シュッシュと鉛筆が紙の上を滑る音が部屋に響く。何か話しかけたいのだけれど、邪魔になってしまうんじゃないかと思うと口を開くことも出来ない。  ただ先生の顔を、ずっと見つめ続けている。  先生は時折視線をずらしながら私の身体とキャンパスを交互に見詰めている。  先生の目には、私がどう映っているんだろう……。 「そんなに見つめられると恥ずかしいですね」 「え?」 「今日はこれで終わりにしましょうか」  言われて時計を見ると、あれから三時間も経っていた。 「見てもいいですか?」 「ん?」 「絵」  キッチンの方へ向かった先生に服を着ながら尋ねたけれど、先生は小さく首を振ってみせた。 「仕上がってからでもいいですか?」 「えー」 「きちんとした絵になったらお見せしますよ」  そう言いながら先生は何かが入ったマグカップを手渡した。 「ホットチョコレートです」 「あったかい……」 「いくら部屋が暖かいとはいえ、ずっとあんな格好では冷えてしまったんじゃないですか? これで温まってください」 「ありがとうございます」  溶けたチョコレートが喉を通っていく。 「おいしい……」  甘いその液体のおかげで体の芯から温まってくるのが分かった。 「このペースなら予定通り明後日には無事終わりそうです」 「そうなんですね」 「ええ、なのであと二日よろしくお願いします」 「こちらこそよろしくお願いします!」  裸になるのは恥ずかしいけれど、こうやって先生と二人きりでしかも先生の自宅にいられることなんて早々ない。  少しでも距離を縮められるように、頑張らなくては……!  私の決意なんて知らない先生は、それではまた明日と優しく微笑んだ。 ***  翌日、昨日と同じように先生の部屋で裸になって椅子に座っていた。  昨日とまるで同じ。  同じはず……なのに、どうしてだろう。先生の視線が、昨日とは違う気がする。  気のせい? それとも……。 「どうかしましたか?」 「え?」  手は止めず、先生が口を開く。 「先程から困ったような表情をされてますが」 「あ、す、すみません……」 「大丈夫ですよ。表情は最後にしようと思って今日は身体を中心に描いていますので」 「身体を……」  モデルの身体を見るなんて当たり前のことだ。それはわかっている。けれど……先生の視線が、胸に、そして下半身に注がれるたび、私の身体の中心が熱く火照りだす。  けれど先生は涼しい顔で描きつづける。まるで私のことなんて意識していないみたいに。  先生の視線はどんどん下に向かっていく。その度に私の身体の中心は熱くなる。  きっと、こんな想いをしているのは……私だけ。  そう思うと体は疼くのに、心は冷たくなっていった。 ***  最終日。今日も変わらず先生は私を描きつづける。  でも、昨日よりもその視線がぐっといやらしく感じられる。舐めまわすように私の身体を見つめ、そして鉛筆を動かす。  今日は表情を書くと言っていたはずなのに、視線は顔ではなく身体へと注がれる。 「んっ……」  どうしてだろう、先生の視線が私の身体を這うたびにまるで見えない手で身体をなぞられ侵されている様に感じる。 「あ……」 「どうしました?」 「な、なんでもありません」 「そうですか?」  思わず漏らした私の声に、先生が視線をあげる。慌てて誤魔化すと、再び先生の目はキャンバスへと向けられた。  私は……秘部から流れ出した蜜が足を、そして椅子へと伝っていくのを先生に気付かれないようにどうにか隠そうとする。  けれど、どんどんと溢れていくそれは隠そうと足をすり合わせるほどに擦りつけられ、ピリッとした刺激が全身に走る。 「んんっ……」  どうしたら、いいのだろう。先生が背中を向けたら……その瞬間にトイレにでも駆け込もうか……。  でも、溢れた蜜が椅子の上にも広がっている。見られたら、おしまいだ……。 「終わりました」 「え……?」  どうすれば先生にバレないように処理できるか、必死に考えていた私の耳に先生の声が聞こえた。 「ありがとうございました、これで完成です」 「あ……」  そう言うと、先生は一歩また一歩と私に近付いてくる。  どうしよう、これじゃあ逃げられない……。 「せ、せんせい……来ないで……」 「ん?」 「来ないでください」 「……三橋さん」  先生は私の脚に垂れた蜜を、指先で掬い上げた。 「あっ……」 「私が、気付いてないとでも思っていましたか?」  その指をペロリと舐めると……先生は可笑しそうに笑った。 「私の視線に反応するかのように、淫らな表情になっていく君に……私が気付かなかったとでも?」  先生は私を立ち上がらせると、キャンパスを見せた。  そこには……頬を紅潮させながら口を開けて物欲しそうにこちらを見つめる私の姿があった。 「やっ……」 「誰にでもこんな顔を見せているんですか?」 「そんな、こと……」 「それじゃあ、私にだからですか?」 「…………」  コクリ、と頷いた私に先生は満足そうな表情を見せる。  けれど、先生の質問はそれだけでは終わらなかった。 「なぜ?」 「え……?」 「なぜ私には、こんな表情を見せるのです?」  言えと、言うのだろうか。  先生のことが好きだから、先生に裸を見られて、先生の視線に身体が反応してしまったのだと、そう言えと先生は言うのだろうか。 「答えてください」 「っ……」 「正しく答えられたらご褒美に」 「あっ……」  先生の指が、私の恥ずかしい箇所へと触れる。 「こんな風に熱くなったここを……鎮めてあげますよ」 「本当、ですか?」 「ええ。正しく答えられれば、ですが」 「…………」  先生の言葉に誘導されるように、私は口を開いた。 「先生のことが、好きだからです……」 「よく、言えました」  そう言うと先生は私の唇にキスを落とした。  そして……。 「こんな風にした責任、取ってくれますね?」  先生が私の身体に下半身を押し付けてくる。そこには……熱くなった塊がドクンドクンと脈打ちながら存在を主張していた。 *** 「あっ……」  先生に連れられて奥の部屋へと行くと、先生はベッドに私の身体を押し倒した。  歯列をなぞり、舌を絡め、先生は私の口の中を犯していく。  首筋、胸と身体中の至る所を舐めながら先生は下へ下へと身体をずらして行った。 「や、そこは……!」  私の脚を持ち上げると……先生は私の恥ずかしい箇所へと顔を埋めた。 「んんっ……」  ぴちゃぴちゃと舐める音が部屋に響く。舐め上げられ吸われ……頭の中が真っ白になるのが分かった。 「軽く、イキましたか?」 「っ……」  口を拭いながらこちらを見る先生は、やらしく微笑んでいた。 「ああ、そういえば――」  何かを思い出したように先生は部屋を出ると、カップを持って部屋へと戻ってくる。 「先生……?」 「用意していたんですが、すっかり冷めてしまいましたね」  指ですくい上げたそれからは、甘い匂いがした。 「ホット、チョコレート?」 「ええ。気に入ってくれたようでしたので、終わったら一緒に飲もうと思ってたんですが……残念」  そう言うと先生は、指についたそれを私の口元へと運んだ。 「え?」 「舐めて」 「っ……」  今までとは違う先生の口調に、胸がキュッとなる。  抗えない……。  小さく口を開けて先生の指先を含むとまるで子猫がするように、私は舌先でそれを舐めた。 「んっ……」 「良い子だね」  先生がもう一度カップからチョコレートをすくうと、今度は自分から私は舌を差し出した。  ぴちゃぴちゃと舐めると、私の唾液と混じってチョコレートが先生の手首を伝う。  それを追いかけるように必死で舐める私の顔を、先生が優しく見つめる。 「美味しいかい?」 「おい、しい……です」  答える私を横目に、先生は反対の手で私の秘部に触れた。 「んっ……!! やっ、そこ、は……!」  クチュ、という音を立てて先生の指が中へと挿入されていく。 「あっ、あっ、あああっ……!」  初めては痛い、なんて聞いていたけれど痛みよりも恥ずかしさと快感が私を襲う。 「気持ちよさそうな顔をしているね」  そう言うと先生は指で私の中をかきまぜる。 「んんっ……!」  今まで感じたこともない快感に襲われながらも――どこか物足りなさを感じるのはどうしてなのか……。 「せん、せ……」 「ん?」 「もっ、と……」 「もっと、なんだい?」 「っ……」 「これじゃあ、足りないのかい?」 「あっ……」  そう言うと、先生は私の身体から指を引き抜いて……蜜でベトベトになった指を舐めながらいやらしく笑った。 「指じゃ満足できないんだね」  先生の言葉に自分が淫乱だと言われているようで恥ずかしくなる。 「しょうがない子だ」  先生は体勢を変えると……私のそこに指とは違う、太くて熱い――先生自身をあてがった。 「少し痛いかもしれないけど」  そう言うと、先端が私の中へと押し入ってくるのを感じた。 「っ……!!」  指とは圧倒的に違う圧迫感に、思わず涙が溢れてくる。 「苦しいのなら、やめようか?」  尋ねる先生の言葉に、必死に首を振ると……先生は優しく笑った。  ゆっくりと何度も何度も押し付けては抜いて、を繰り返している内に先生の表情が苦しそうになってきたのに気付く。 「せん、せ……」 「っ……そんな表情を見せられたら、もう……」  私の中の先生が、より一層大きさを増す。 「出す、よ……」  その瞬間――私の中に熱いものが注がれるのを感じた。 ***  目を覚ますと、隣で先生は私を見つめていた 「おはよう」 「おはよう、ございます」  先生の視線が私の身体に向けられているのに気付くと、必死にシーツ掴んで体を覆った。  そんな私を見て先生は笑う。 「今更そんなことをしても、さっき全て見てしまったよ?」 「そんなこと、言わないでください……!」 「可愛いね。……ねえ」 「なんですか……?」 「もう一回、襲ってもいいかな?」 「無、無理です……!」  慌てる私を見て先生は、もう一度笑った。
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