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第45話 離婚二日前 2

 剛毅からメールが来たのは、昼休憩に入った直後だった。 『離婚するって聞いたが本当なのか?』  相変わらずストレートに聞いてきた従兄弟に、亜紀は苦笑する。確か剛毅も昨日の理事会に出ているはずだ。そこで和明が理事を辞任することが了承されたのだから、その流れで知っていてもおかしくない。  しかし、信じられないのだろう。しかし、電話だと聞きづらい。だからこうしてメールで来たのだ。亜紀は、すぐさま「そうよ」とだけ打って返信した。  もしかしたら、すぐさま電話が来るかもしれない。剛毅のことだから、きっと来る。そう思ったときだった。持っているスマホがぶるぶる震え、従兄弟の名前が表示された。 「もしもし、剛毅?」  平然を装って問いかけると、開口一番訴えられた。 『なんでだよ!』 「なんでって、そういう契約を結んでいたの。結婚する前に」  事実だけを述べるが、剛毅は納得してくれなかった。 『契約? でもお前も和明さんもお互い愛し合っていたはずだろ、それなのになんなんだよ!』 「なんなんだよって言われても困るわ。二年のあいだに子供ができなかったら別れる。そういう契約を交わした。でも子供ができなかった。だから別れることにした、ただそれだけ」  亜紀は呆れながらも、それを声に出さないように返事した。  剛毅は何か思い違いをしている。自分は和明を愛していた。そして和明に愛されていると信じかけたのに、裏切られたのだ。それが分かったときのことを思い出した途端、ずっと胸の奥に抱えていた古傷がじくじくと痛み出した。亜紀は顔を歪ませる。  所詮、他人の心のうちなど分かるわけがない。だからこそ、言葉で信じさせてほしかった。しかし、和明はあの事実を否定しなかっただけでなく、さも自分がけしかけたように言って開き直ったのだ。 『言ったはずだ。これは契約結婚だと。それにお前も言ったじゃないか。安らぎを与えてくれる相手のところへ行ったらいいと。そうしたまでだ』  その言葉を言われたときのことを思い出したら、鼻の奥がツンと痛んだ。涙が出る兆候だ。それに気づき、亜紀は電話を終わらせようとした。 「とにかく、離婚は決まったことなの。だからこの話は終わり、いいわね」  涙を堪えながらそう言い放つと、受話器の向こう側から不満そうな声がした。
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