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第29話 五章 3

 和明より一足さきに寝室へ戻り、亜紀はベッドに潜り込んだ。  偶然聞いてしまった会話の内容を振り返ると、北条会と上条会の間に何かがあることは明らかだった。しかも、それはあまりいい類いのものではない。亜紀は不安を募らせた。  亜紀の祖母の実家は北海道にある。道内でも一二を争うほどの大きな個人病院を経営し、医療法人を立ち上げていた。それが北条会である。そこと上条会が繋がっているとしても、何ら問題はないのだが、和明の言葉からその間に不正な資金のやりとりが有るような気がした。  だが、亜紀は経営のことなど分からない。ましてや、医療法人の資金の用途など分かるわけがないのだ。そういったものは、すべて事務局長である井川と理事会でどうにかしていると思っていたし、なるべくなら関わらないようにしていた。  しかし、あの話を聞いてしまったせいで、気になってしまう。嫌な胸騒ぎを覚えながら、亜紀はベッドに体を横たえていた。  すると、間もなく部屋の扉が開いた音がした。カーペットを踏みしめる足音が近づいてくる。体に掛けている布団が控えめに動いた。ベッドがわずかに揺れ動いた直後、隣にいるであろう和明の視線を背中に感じた。  亜紀は寝るとき、スリップ型のナイトドレスを身につけている。和明に背中を向けて寝ていることもあり、無防備なうなじや肩、そして背中が長い髪の合間から覗いていた。  見られていると思うだけで、あらわになっているところが熱を帯びてきた。その熱は肌の下にまでしみこんで、体の芯を熱くさせる。そして更に肌を熱くさせ敏感にさせていく。そのせいで、肩からずれた肩ひもや、肌に落ちた髪のことまで敏感に感じ取っていた。  悪循環ともいえる状態の中、亜紀はじっとしながら、落ち着かない気分になっていた。息を殺しているせいで息苦しさは酷くなってくる。張り詰めた空気が漂う中そうしていると、背後で和明が動いた気配がした。心臓が大きく脈打つ。すぐ後ろに和明が迫っているような気がした。亜紀はとっさに瞼を固く閉じ、体を竦ませる。  しばらく経ったあと、気配が再び動きだし、亜紀は固唾を飲んだ。腰に腕が回されたと思ったら、背中に温かいものが触れた。垂れた髪を上げられて、あらわにされたうなじに温かい息が掛かる。そこに柔らかいものを押しつけられて、亜紀は吐息を漏らした。  視線によって高ぶった体は、すっかり熱くなっていた。その直後、ぐっと体を押しつけられた。そのせいで尻に硬いものが当たり、そこへ意識が向かっていく。腰に回された腕がもぞもぞと動きだし、シルクの上を滑るように温かい手が下腹へと向かっていく。その動きを追っているうちに、唇はいつの間にか耳裏へとたどり着いていた。弾力のある唇が熱い吐息を漏らしながら、薄い皮膚を食む。くすぐったいのとはまた違う感触に、亜紀は肩を竦ませながら声を漏らす。 「ん……」  その声は、自分が漏らしたものとは思えぬほど艶めかしいものだった。亜紀は正気を取り戻し、和明から離れようと体を捩らせる。  だが、下腹を撫でていた大きな手に抑えつけられた。そのせいで、尻に当たっていたものが尻の割れ目にぐっと差し込まれ、その感触がよりダイレクトに伝ってくる。  すると、和明が抜き差しを思わせる動きをし始めた。尻のあわいにあるものがどんどん堅さを増していく。それだけでなく、耳裏に感じる息づかいも荒くなってきた。そうされているうちに、正常な思考も理性もとろとろと溶け始め、体の奥がうずうずと疼き出す。  下腹を押さえつけていた手がそこから離れた。その手は太ももへと伸びて、焦らすようにゆっくりと裾をまくり上げていく。そして肌の感触を確かめるように撫で始めた。 「……っ」  下からなで上げられて、亜紀は声を詰まらせた。撫でているだけのような気がしたが、そうではない。明らかに秘所へと向かっていることに気付き、足をぴったりとくっつけた。だが、それは徒労に終わる。そけい部をたどり、そこに手が差し込まれ、亜紀は体をびくっと震わせた。  抗いたいのに抗えないのは、惚れた弱みもあるだろう。現に抵抗らしい抵抗を亜紀はしていない。甘んじて愛撫を受け入れている。亜紀は、声を漏らさぬように両手で口を塞いでいた。重ねた小さな手の指の隙間からは、絶えず切なげな吐息とともにか細い声が漏れている。  そして疼きとともに熱を帯びた場所へ指先がたどり着いたとき、亜紀は体を震わせた。その指先は、湿り気を帯びたものをかき分けながら、その奥へと進んでいく。指の動きに急速に意識が向かってしまい、幾ら気を逸らそうとしても無理だった。  意識が向かうと、そこから伝う刺激により敏感になるらしく、些細な指の動きにさえ反応してしまう。芽吹いた快感に耐えようとして、亜紀は両脚を閉じようとした。だが、ただそれができないまま、ふるふると体を震わせるばかりだった。  焦らすようにゆっくりと指が奥へと入り込んでくる。濡れた花弁の周りをそっと撫でられたとき、もどかしいまでの快感のせいで体が小刻みに震えた。意識が花弁の奥へと吸い込まれていく。  そこは既に淫蜜にまみれ、濫りがましくひくひくと蠢いていた。その更に奥では、そこをみっちりと埋めてくれるものを待ちわびている。指では物足りない。でもそこに早く触れてほしい。亜紀は身もだえしながら、今にも快感に飲み込まれそうになっている。  このままでは快感に飲み込まれてしまう。そうなったら、何を口走ってしまうか分からない。快感で心の殻が剥がれてしまい、その奥に抑え込んだ感情が漏れてしまうことが怖かった。亜紀が声を漏らさぬように必死になって口を隠している傍らでは、和明の指が快楽の芽にするすると伸びている。  背後から聞こえてくる和明の息は、すっかり乱れていた。熱のこもった男の呼気が火照った肌に掛かるたび、そこからぞくぞくとした痺れが走る。汗で濡れた肌が擦れ合うたび、その動きに合わせたかのような吐息と声が部屋に響いた。  快感と理性がせめぎ合っていると、ついに指先がそこにたどり着いた。薄い包皮ごしに撫でられたとき、淡い快感が脳天まで突き抜ける。わずかに残っていた理性と思考が、一瞬のうちに消えうせた。花弁の奥が切なく疼く。亜紀は愛撫を繰り返す和明の腕を強い力で掴んだ。 「あ……っ」  その直後、指の動きが速くなり、雌蕊(めしべ)を容赦なく苛んだ。そこから伝う快感と痛みが交じり合い、体の中で熱が急速に膨れがある。鋭い快感が一気に迫ってきたかと思ったら、瞬く間に襲いかかってきた。膨れ上がった熱が一瞬のうちにはじけ飛ぶ。  汗がどっと一気に噴き出し、全身が小刻みに震えだす。亜紀は苦しげに顔を顰めながら背をのけ反らした。絶頂の悦びに打ち震えながら声を漏らす。 「ああっ!!」  和明の胸に頭を押し付けながら、亜紀はほっそりとした喉を反らす。襲い掛かってきた絶頂の波が引き潮のように引いていこうとしていたときだ。今しがた絶頂に達したばかりの雌蕊(めしべ)を、強い力でぐっと押し潰された。  強烈な快感が、痛みとともに襲い掛かってきた。絶頂の余韻が残る体は一瞬にして硬直し、ぶるぶると小刻みに震え始めた。亜紀は余りにも強烈な快感のせいで、声も出せないままはくはくと浅い呼吸を繰り返している。大きく見開いた目には涙が溜まっていた。  再び絶頂に押し上げられてしまったせいで、体からすっかりと力が抜けていた。ふくれあがった雌蕊(めしべ)を苛め抜いた指は、そこから離れすっかり濡れそぼつ場所をゆるゆると撫でている。  撫でられるたび、その奥が疼くだけでなく、腰が勝手にくねりだした。すると尻のあわいに挟まれていたものの熱と硬さが、みるみるうちに増していく。それを薄い布越しに感じているうちに、どんどん淫らな気分になってくる。亜紀は顔を上気させ、吐息交じりにくぐもった声を漏らす。  撫でられている場所からは、とろみを帯びた雫がとめどなく溢れていた。そして男の指を濡らし、こすれ合うたびに粘着質な音を立てる。先刻まで静まり返っていた夜更けの寝室には、その音とともに亜紀の喘ぎが響いていた。  そして頃合いを見計らったように、指がしとどに濡れた花弁をかき分け、その奥へと入り込んできた。とはいえ、浅い場所で指を止め、熟れた果実のように蕩けたあたりを探り始める。  内壁に這わされた指は、何かを探しているようだった。しかも雌蕊(めしべ)の真下に当たるあたりを撫でている。亜紀は朦朧となりながら、優しく這わされる指の動きを追っていた。  指がある場所に触れたとき、ぞくりとした。腰がざわざわとし始め、亜紀は声を詰まらせる。今まで一度も味わったことがない未知の感覚に戸惑っていると、背後から掠れた声が聞こえてきた。 「ここ、か……」  荒い息づかいとともに聞こえた言葉の意味が分からない。亜紀は、汗を滲ませながら、本能的な恐れを感じ、和明の腕を更に強く握りしめた。  喘いでいる亜紀の背後では、和明が狡猾そうな笑みを浮かべている。額には汗がにじんでいて、そこに乱れた前髪が張り付いていた。  和明の指は執拗なまでにそこばかり撫でている。撫でられるたびに、ざわざわとしたものがそこから広がった。誰だって未知の感覚には恐れを抱くし、それは亜紀だって例外ではない。指が触れているところから得体の知れない感覚が広がるだけでなく、膨れ上がってくる。それを辞めてほしかったけれど、絶頂の余韻が尾を引いているものだから抗えない。  すると、和明の指が再び雌蕊(めしべ)に触れた。触れただけでなく捏ね始める。そこからの快感と、奥からの得たいのしれない感覚がシンクロしたとき、亜紀はより深い絶頂に達した。  三度目の絶頂の余韻に浸りながら、亜紀は深呼吸を繰り返していた。  呼吸が落ち着いてくると、朦朧としていた意識と感覚が戻ってくる。体からはすっかり力が抜け落ちていた。  手足を動かそうにも動かせず、亜紀はぐったりと体を横たえている。汗が滲む肌の火照りは、まだ鎮まっていない。そして体の芯も熱を保ったままになっていた。  尻のあわいに挟まったままになっている怒張に意識を向けると、熱を帯びたままになっていた胎の奥が切なく疼いた。それを逃そうとして、亜紀は倦怠感が残った体を捩らせる。 「う……」  すぐ後ろから聞こえてきた声は、体の芯を再び熱くさせるほど切なげで煽情的だった。亜紀は、腰を僅かに揺り動かす。すると、切なげな吐息に交じって声が漏れた。  淫らな遊びに耽っていると、足の付け根に差し込まれた手がそこから離れ、腰をしっかりと掴んだ。 「このままでいいのか?」  熱をおびた声だった。亜紀がそれに何も応えないでいると、肩を掴まれそのままくるりと反転させられた。向かい合ったと思ったら、和明がゆっくりと覆いかぶさってくる。それに合わせて亜紀は瞼を閉じた。  すぐに唇を重ねられ、熱い舌を受け入れた。押し掛かる男の体が熱い。その熱に溶かされてしまいそうなほど。叶うことなら溶けてしまいたいと亜紀は思う。そうすれば和明の心がどこを向いていようとも、一つになったままでいられるのだから。  和明に抱かれその愛撫に身を任せているときだけは、胸の奥に秘めた思いを解き放つことができる。それに、彼を一人の男として心から求めることが許される。せめてそのときだけでもいいから、和明に求められ愛されたい。たとえそこに心はなくとも。  亜紀は和明の背中に手を添えた。その直後、和明の手が彼女の体を弄り始める。体のラインをなぞりながら下りた手が、捲れ上がったままになっていたドレスの裾から入り込んできた。  肌を重ねたら相手の心に触れられると信じていたのはもう四年も過去のことだ。多分それは、若かったからそう思えていたのだろう。現にこうして抱き合っていても、和明が何を考えているかなど分からないのだから。亜紀は和明に身を委ねながら、彼の肩越しに見える暗闇に視線をさ迷わせた。  ナイトドレスをたやすく取り払われた。白い胸元に和明が口付ける。音を立てながらそこに何度も口付ける男の頭を、亜紀は切なげな顔で撫でていた。  しばらくしたあと、おもむろに和明が体を起こした。そしてシーツの腕に投げ出したままになっていた両脚の付け根に、彼が腰をゆっくりと押し付けてきた。  秘めやかな場所に触れた怒張は熱くて硬かった。それをゆっくりとこすり付けるような動きが、まるで抜き差しを思わせる。既に濡れそぼっている場所から淫らな水音が立ち始め、接している場所がずくずくと疼いてきた。  すると急に腰をしっかり掴まれ、ぐいと引っ張られた。結果更に怒張を押し付けられてしまい、その熱と硬さに意識が一気に向かう。その熱と硬さに呼応するように、胎の奥が切なく疼いた。亜紀は和明を誘うように腰をいやらしくくねらせる。 「来て……」  亜紀は卑猥な音をたてながら怒張を擦りつけている和明に呼びかける。荒い息を吐きながら、汗を滲ませた顔を向けられた。切羽詰まった表情を浮かべる和明に、亜紀は切なげな表情を浮かべ|希《こいねが》う。 「お願い……」  とどめを刺すように和明の名を呼ぶと、強い力で両脚を持ち上げられた。脚を持ち上げられたことにより、晒されたところがじくじくと疼き、その奥が物欲しげに収斂を繰り返していた。ひくひくと蠢く場所が何を欲しているのか分かるだけに、早く和明と繋がりたかった。 「欲しいなら全部くれてやる。だから、亜紀……」  最期まで言い切らないまま貫かれ、亜紀はその衝撃に耐えるように顔を顰めさせた。すぐ襲いかかった圧迫感に息を詰まらせると、すぐに馴染み始めたようでそれは次第に緩んでいった。  激しく突き上げられるかと思いきや、和明の抜き差しは優しかった。接しているところから伝う鼓動や熱が愛おしい。和明を受け入れている場所がじんと温かくなり、じわりとそこから何かが染み出したような気がした。  亜紀は逞しい背中に手を添えてしっかりとしがみ付く。するとしがみ付いている男の体が熱くなってきた。そしてすぐに息遣いが荒々しいものに変わっていって、獣じみたうめき声を耳にした直後、絶頂に押し上げられた。
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