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第24話 四章 5

 間接照明の淡い灯りが壁を照らし、部屋中に柔らかな光が満ちている。  亜紀はベッドのすぐ側に立ち、壁一面の大きな窓から夜景を眺めていた。  窓の向こう側で瞬く光は、街の輪郭をくっきりと浮き上がらせている。それをぼんやりと眺めていると、窓に自分達の姿が映っていることに今更ながら気がついた。  美しい振り袖を着ている自分を、背後から和明が抱き締めている。抱き締めているだけでなく、抜いた襟から覗くうなじに唇を押しつけられていた。  柔らかな唇が離れたあと、湿ったところに息が掛かる。熱が籠もった吐息が肌を掠めるたびに、そこから震えが走った。そうされ続けているうちに、体の内側に熱が溜まっていく。その熱はゆっくりと体の芯を溶かしていった。それに伴い体から力が抜けていく。気付けば、背後にいる和明に体をもたれかけていた。  熱を帯びた肌は、些細な刺激でさえ敏感に感じ取るようになっていた。首筋やうなじに口づけられるたび、亜紀はうっとりと目を細めながら声を漏らす。  亜紀の腰を抱いていた両手が、サファイアの帯留めを外し始めた。しなやかな指先が帯紐の結び目に掛かり、するすると解いていく。解かれた帯紐は、音を立てて床に落ちていった。  その音に気付いて、亜紀は閉じていた瞼を開いた。ふいに窓に目をやると、そこに映り込んでいる自分達の姿が見えた。まるで鏡のようになっている姿を見ていると、帯に置かれた大きな手に目が留まる。  いつの間にか、帯留めはおろか帯紐も解かれていた。黒い帯に添えられていた手が、そこから離れていくのを、亜紀は浅い呼吸を繰り返しながら眺めていた。その直後、背後から体が前後に揺らされる。  どうやら帯を解くのに苦戦しているようだった。体に籠もる熱をやり過ごしながら、じっとしていると、しっかり巻き付けられた帯が徐々に緩んでいった。しゅるしゅると擦れる音とともに、帯が円を描いたまま足元に溜まっていく。  帯を取り払われたあと、体を反転させられた。和明と向かい合ったとき、急に恥ずかしくなってきて、亜紀は顔を俯かせた。  和明の手が、帯の下に隠れていただて締めに伸びた。結び目に指を掛けられ解かれる。重なり合っていた着物のあわせが開いて、下に着ている白い襦袢(じゅばん)があらわになった。絹ごしにひんやりとした空気が触れたそのとき。和明に優しく抱き締められたと同時に振り袖を脱がされた。着物が体のラインに沿って滑り、足下に落ちていく。  襦袢(じゅばん)だけの姿となり、急に心もとない気分になる。恥ずかしさの余り、火照った肌が更に熱くなった。亜紀は、目の前に立っている和明を直視できず、わずかに顔を俯かせる。だらりと下ろした手が、無意識のうちに襦袢(じゅばん)を握りしめていた。  すると和明の手が、襦袢(じゅばん)を締めている紐に掛かった。あっけないほど簡単に解かれたあと、襦袢(じゅばん)を脱がされて、生まれたままの姿にさせられた。  柔らかな光に照らされて、なめらかな肌に陰影が浮かび上がる。華奢な肩、ほっそりとした腕、形のよい乳房の先端はわずかに立ち上がっていた。くびれた腰から肉付きの良い臀部へ続くラインは、女性らしいなだらかな曲線を描いている。  肌に夜の空気が触れたけれど、不思議と冷たさは感じなかった。裸になっていることの羞恥からなのか、それとも気分が高ぶっているからか、どちらなのかは分からない。  大きな手が銀細工の髪留めに伸びた。ぱちんと音がした直後、肩に髪がふわりと落ちる。  解かれた髪を指で梳かれ、整えられた。  おずおずと顔を上げると、満足げな笑みを向けられていた。亜紀は目の前に立っている和明を見つめながら、彼が着ている上着に手を伸ばした。   黒い上着を脱がせたあと、亜紀はシャツのボタンを一つ一つ慎重に外していった。  その様子を和明は窺うように見下ろしている。  全てのボタンを外し終えると、シャツの合わせが自然と開き、そこから引き締まった胸が見えた。それと同時に肌の匂いが立ち上がり、亜紀はその匂いに誘われるようにゆっくりと顔を近づけながら、指先を伸ばす。  わずかに隆起している胸に指を這わせ、ゆっくりと下ろしていく。すると、頭上から唾を飲み込む音が聞こえてきた。それに気付いて顔を上げると、和明が顔をこわ張らせていた、それを目にしたとき、自分を見下ろしている和明が緊張しているような気がした。  和明が相当に女慣れしていることは分かっている。それなのに、今更緊張しているのか分からなかった。沸き起こった疑念を振り払うように、亜紀は開いたシャツのあわせから手を差し入れた。  硬い胸に手を押し当てると、そこから力強い鼓動が伝ってくる。手のひらを胸から腹へとゆっくり這わせると、急に和明の胸が大きく盛り上がった。  そして引き締まった腹から臍の手前にたどり着いたとき、いきなり手首を掴まれた。強い力で腕を持ち上げられて、抱きしめられる。急な出来事に驚いてしまい、とっさに顔を上げてみると、笑みを浮かべた和明から見下ろされていた。 「男を煽るとどうなると思う?」  低く掠れた声だった。和明に問いかけられたは良いが、亜紀は言葉を詰まらせる。それは向けられた瞳が、獲物を求める獣のようなものだったからだ。  どう猛な光が見え隠れしている瞳に見つめられ、恐れを感じずにいられなかった。体が動かないばかりか、喉が引きつっているせいで声が出なかった。和明を見つめたまま、亜紀は顔を青ざめさせる。掴まれた小さな手は、かすかに震えていた。  亜紀の異変に気が付いたのか、和明は掴んでいた手を離し、彼女を包むように抱きしめた。熱を失いかけた背中に温かい手が添えられて、こわばった体から力が抜けていく。亜紀は背中に腕を回して瞼をそっと閉じた。  硬い胸に顔をすり寄せると、熱を帯びた肌から嗅ぎなれた匂いが立ち上がっていた。ふだんはフレグランスで隠されているけれど、こうやって鼻を近づけるとその存在に気付く。その匂いを嗅いでいるうちに気持ちが落ち着いてきて、亜紀は肌に唇を押し付けた。  硬い背中に添えられていた小さな手が、わき腹を通り過ぎ引き締まった腹にたどり着いた。亜紀は首の付け根に唇を柔く押し当てたまま、開いたシャツから覗いている肌を指先でなぞりながらゆっくり下ろしていく。  すると和明の体がわずかに震えた。腰に回された腕の力が強くなり、より一層きつく抱き締められた。押しつけられた体が先ほどよりも熱くなっている。それだけでなく、頭上から聞こえてくる息遣いが徐々に乱れ始めていた。  ふと思い立ち、亜紀は唇を押し付けていた場所を舌先で舐める。すると切なげな吐息とともに漏れた声が聞こえてきた。それを耳にしたとき、奇妙な満足感に包まれた。  いつもであれば、乱される一方だった。女の扱いに長けている男にとって、自分のような女を官能の海に沈めることくらいお手の物だろう。しかし、今は自分が和明を翻弄させている。そう思うと、心が満たされた。そしてその事実が、彼女を大胆にさせていく。  亜紀は和明の鎖骨へと唇を這わせ、そこに口づける。それとともに指先をすっと下ろすと、ベルトの金具にたどり着いた。何のためらいもなくベルトを外し、ファスナーをゆっくりと下ろす。  和明の視線を感じながら、亜紀は腰をゆっくりと下ろしていった。胸や腹にキスをしながら、スラックスを脱がしていく。膝立ちになると、目の前では怒張したものが柔らかな生地を押し上げていた。形がはっきりと分かる。  ふくらみに手を伸ばし、そっと持ち上げる。優しく摩ってやると、ビクッと跳ねて硬さを増していった。 「う……」  熱っぽい吐息とともに漏れた声が耳に入り、体の奥がじんと熱くなった。手のひらから湿り気をおびた布の感触と、その下にあるものの硬さが伝わってくる。引き寄せられるようにそれに顔を近づけてみると、男の匂いがしっかり立ち上っていた。  男の切なげな息遣い。手のひらから伝う熱。みるみるうちに硬く張りつめるもの。  そして濃さを増す男の匂い。それらすべてが、亜紀の中にある女の本能を揺さぶった。  体の芯が熱を発しながらゆっくりと溶けていく。その熱は全身へ広がっていき、体の内側から火照り始めた。亜紀は溜まった熱を吐き出すように、悩ましげに息を漏らす。  ふくらみを布地越しに指でなぞると、その動きに合わせて頭上から切なげな吐息が聞こえてくる。伝う堅さと熱に愛おしさを感じ、亜紀は唇を押し付けた。するとそれから逃げるように、腰がわずかに遠のいた。それを追いかけ唇を押し付けると、布地から怒張が発する熱が伝ってくる。 「うあ……っ」  頭上から切羽詰まったようなうめき声が聞こえてきた。唇を押し付けたまま和明を見上げると、荒い呼吸を繰り返しながら余裕など感じられない表情で見下ろしていた。  熱に浮かされたような瞳を見つめ返したまま、亜紀は唇で硬く張りつめたものを挟み込んだ。すると和明が唇をかみ締め、ぐっと何かを堪えるように顔を険しくさせる。咥えたものをゆっくりと舌先で舐め始めたとき、いきなり腕をとられてしまい、そのまま強引に抱き締められた。  淡い光に照らされた和明の顔が眼前に迫る。全く余裕が感じられない表情を向けられていた。欲望を滾らせた瞳から目をそらせない。それまで感じていた愉悦が、一瞬で消えうせた。 「こうまで煽られたのは初めてだ。亜紀、覚悟しろよ」  そう言われた直後、ベッドに押し倒された。間髪おかずに両手をシーツに縫い留められた上に、和明が勢いよく覆いかぶさってきた。和明を見上げれば、まるで獲物を見定めているような瞳で見下ろされていた。亜紀は呼吸をするのも忘れ、自分を見下ろす男を見つめ返す。  和明の顔がゆっくりと近づいてきた。目が細まり、形の良い唇がわずかに開く。体にのし掛かってくる重みが増した。そして唇を塞がれる。唇を割り開くようにざらりとした舌が差し込まれた。  待ちかねたように舌を絡ませると、すぐに絡め取られてしまい、たちまちのうちに翻弄されていく。開いた唇から荒い息が漏れ始め、甘えるような声が自然と鼻から抜けていった。  手首を掴んでいた手が離れた次の瞬間、ふっくらと盛り上がった乳房へと伸びた。大きな手が白いふくらみを鷲掴み、弧を描くようにこね回す。それと同時に和明は、亜紀の両脚の間に体を滑り込ませた。  唇がゆっくりと離れていった。それまで塞がれて唇が解放されて、亜紀は空気を求めるように喘ぎ出す。開いた口から漏れる息はすっかり乱れていた。すっかり潤んだ瞳はどこか遠くを見つめている。  首筋に和明が顔を埋めてきて、そこかしこに熱い呼気がかかった。乳房を捏ねまわしていた大きな手は、いつの間にかそこを離れ、亜紀の脚の付け根に向かっている。同時に和明の唇が首筋から胸元へと移り、ふくらみの先端へと向かっていた。  開いた脚の付け根に手が差し込まれたのと、尖りを口に含まれたのはほぼ同時だった。二方向から快感が同時に襲いかかり、亜紀は声を詰まらせながら背をのけぞらした。  硬く尖った舌先でころころと転がされるたびに、そこから断続的な快感が走った。差し込まれた指先で、包皮に守られたところを遠慮がちに触れられるたび、男を受け入れる場所の奥が疼く。  亜紀は息も絶え絶えになりながら、快感と疼きに耐えた。しかし、それらはどんどん酷くなり、やがていてもたってもいられなくなってきた。 「早く……」  与えられた快感が、正常な思考だけでなく理性をも剥ぎ取っていく。本能に従い、その言葉を盛らしてしまったことを悔やみながらも、求めずにはいられなかった。  だが、いつまで経っても和明はそれをくれようとしない。それに我慢がならず、亜紀は泣きそうな顔で和明へと視線を走らせる。するとそのとき、視線がぶつかった。  上気している乳房の先端は、痛いくらいに立ち上がっていた。唾液で濡れた乳嘴に荒い息が掛かる。視線を合わせたままでいると、急に和明が体を起こしながら両脚をぐっと押し上げた。 「あっ……!!」  押し上げた亜紀の両脚を肩に担ぎ上げ、和明が体を倒してきた。汗で濡れた顔が迫ってくる。ひくひくと疼いているところに硬いものが触れた。その直後、衝撃と圧迫感が一気に襲いかかってきた。体内の奥深くに肉杭を埋め込まれ、亜紀はシーツをぎゅっと固く握りしめながら体を震わせた。  欲しかったものがようやく手に入った喜びを感じた。そしてその喜びは全身へ急速に広がっただけでなく、心さえ満たしていった。亜紀は汗で濡れた和明の体にしがみつきながら、あられもない声を上げる。快感に飲み込まれ朦朧としていると、和明の声がした。 「亜紀……」  荒い息を吐きながら、自分の名を呼ぶ男が愛おしい。亜紀はそれに応えるように、和明の体を強い力で抱き締めた。
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