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第74話

 口付けられて、体の奥に灯が灯る。  唇を重ねるたびに火は勢いを増していき、その熱のせいでどんどん息苦しくなってくる。亜紀はたまらず、和明の唇が離れたと同時に吐息を漏らした。だが、すぐにやんわりと塞がれて、下唇を軽く引っ張られる。  今まで幾度となく繰り返された行為でも、今夜のそれは明らかに異なっていた。その証拠に、唇を重ねただけなのに、息がすっかり上がっている。それは和明も同じだった。浴衣越しに触れる硬い体が、いつも以上に熱い。淡い光が照らす寝室に、二人の乱れた息づかいが響く。  間接照明だけが灯された部屋の壁には、抱き合う二人の影ができていた。男の体に回された細い腕が、すっと下りていく。すると、それまで亜紀の唇を啄んでいた唇が、その動きを急に止める。無意識のうちにそっと目を開くと、間近に迫る和明と目が合った。すっかり濡れた唇に、温かい息が掛かる。 「帯、解けるのか?」  からかうような言葉を掛けられたが、亜紀はそれを気にすることなく和明の帯を緩めた。しゅるしゅると衣擦れの音を立てながら、帯の結び目が解けていく。帯が和明の腰から落ちた。合わさっていた襟元が、緩く開く。開いた襟元に手を伸ばし、胸に添えた。和明は浴衣のしたに何も身につけていなかった。張りのある肌から、力強い鼓動が伝ってくる。すると、それまで背中を撫でていた手が腰へと下りてきた。それに気がつき、亜紀は目を上目にして和明を見上げる。 「あなたこそ、解けるの?」  軽口で返した途端、狡猾そうな笑みを向けられた。そして、あっけないほど簡単に帯を解かれてしまう。体に巻き付いたまま、帯が足下に落ちた。帯を解いた手が裾よけの紐に伸びてきて、それもすぐに取り払われてしまう。  緩く開いた浴衣の襟元から、白い襦袢がのぞいている。得意げな表情を浮かべた和明が、襦袢とともに水色の浴衣をさっと取り除く。すると、柔らかな曲線を描く女体があらわになった。わずかに火照り出している肌に、夜の空気が触れて心地良い。  裸にされたというのに、恥ずかしさは一切感じなかった。亜紀は、胸や下腹を隠そうともしないまま、和明だけを見つめている。真剣な眼差しを向ける瞳には、よこしまな欲望は感じられなかった。  しばらく見つめ合ったあと、どちらからともなく唇を重ねていた。亜紀ははだけた浴衣を、ゆっくりと脱がしに掛かる。濃い藍染めの浴衣の袖から逞しい腕が引き抜かれると同時に、ぎゅっと抱きしめられた。  キスをしながら和明のリードに身を任せていくうちに、いつの間にかベッドへとたどりついていた。二人は生まれたばかりの姿のままで、互いを求め合うように抱き合いながら深い口付けをし続けている。  わずかに開いた唇の間から、濡れた舌がするりと入り込んできた。それを出迎えるように、亜紀は舌を伸ばす。すると、ざらりとした肉厚な舌が絡まりついてきた。それと同時に、背中に添えられていた手がゆっくりと下りていく。  背筋に指先が触れたとき、そこから痺れに似たものが走った。亜紀は無意識のうちに鼻に掛かった甘やかな声を漏らしながら、逞しい背中に指を食い込ませた。自然と体を押しつけてしまい、丸い乳房が硬い体に押しつぶされる。  短い息を吐きながら、悩ましげな表情を浮かべる様は、見るものによっては苦しそうに見える。しかし、実際はそうではない。触れる男の熱に呼応するかのごとく体の奥が熱くなり、それで息苦しくなっているだけだった。不思議なことに息苦しくなればなるほど、快感は深くなる。  焦れったいほど緩やかな愛撫と深い口付けのせいで、これからもたらされる快感への期待が膨らんでいく。それは、和明に過去の話を切り出すまで、張り詰めていたものが緩んだせいもあるだろう。そのせいで、いつもより強く和明の熱を感じていた。  もはや、すべての主導権は和明にある。亜紀はただ甘んじて、身を任せるしかなかった。まるで何かに吸い取られるように、体から力が抜けていく。腰に力が入らず、立っていられない。亜紀はしがみつくように男の体に抱きついた。すると急に和明が、唇をすっと離す。 「しっかりつかまってろ」  腰を撫でていた大きな手が、肉付きのよい尻たぶを鷲づかむ。背中を支えながら亜紀を腕に抱いたあと、和明はベッドに膝をついた。そして彼女を腰に跨がらせる。  そのとき、足の付け根に熱いものが触れた。それがなんであるかなど愚問に等しい。硬くそそり立つものから発せられる熱が、受け入れるところを更に潤ませる。体の奥から、じわりと温かいものが沁みだし、溢れてくる。それがひとつに繋がることを待ちわびているように思えてしまい、亜紀は内ももに力を入れて閉じようとする。だが、男の腰を挟むように開かされているせいでできなかった。 「欲しいか? 俺が」  和明が掠れた声で問いかける。視線を下げると、狡猾そうな笑みを向けられていた。亜紀はとっさに顔を逸らす。それは何も気分を害したからではなく、いたたまれない気持ちになってしまったからだった。  長いキスと焦らすような愛撫のせいで一度は蕩けた思考が、意地の悪い言葉のせいで醒めてしまい、淫らに反応している自分が急に恥ずかしくなったのだ。それで顔を背けたのだが、本音を言えば悔やんでいるが、どうしたら良いのか分からない。しかし、言葉で応えるのはためらわれる。  そっぽを向いたまま拗ねたような表情をしている亜紀を見て、何かを感じ取ったのだろう。和明が、彼女の体をぐいと引き寄せ、柔らかな乳房に唇を押しつける。 「あ……っ」  亜紀はとっさに逃げようとした。だが、背中に添えられた手がそれを阻む。体を捩らせどうにか抗ってみたけれど、弾力のある唇から逃れることはできやしない。そうこうしている間に、唇は胸の先端へとたどり着き、すっかり立ち上がった乳嘴(にゅうし)に触れた。  敏感になっているところを唇が掠め、思わず声を漏らしそうになった。それを押しとどめたのは、小さな手だ。わずかに開きかけた口から漏れる吐息が、細い指に掛かる。亜紀は顔をしかめさせた。 「欲しいと言うまでやらんぞ? それでもいいのか?」  和明が唇で尖りを嬲りながら問いかける。唇が動くたびに、ふっくら立ち上がったところが、左右に揺れた。擦られているせいで襲いかかる淡い快感に耐えかね、亜紀は音を上げた。和明の頬を両手で挟み、唇を押しつける。小さな舌を差し込むと同時に、腰をぐっと押さえ込まれるように下げられた。 「ん……っ」  濡れたところに硬いものを押しつけられたとき、触れたところから粘着質な水音がした。同時にそこが目覚めたかのように熱を帯び、下腹の奥が切なく疼く。そのとき、胎の奥に空洞ができたような気がした。そこを埋めることができるのは、ただひとつだけ。それを求めるように、亜紀は腰をわずかに揺する。  肉厚な舌が、我が物顔で舌に絡まりついてくる。重ねた唇の隙間から、どちらともつかない荒い息が漏れ出した。その合間に、うなり声のような低い声が漏れる。和明だけでなく、自分の体も一気に熱を帯びてきた。その熱は、一瞬のうちにすべてを溶かしていく。  頃合いを見計らったかのように、和明が亜紀の腰をわずかに浮かせた。そして股間のものを支え持ち、狙いを定めたあと、彼女の中にゆっくりと差し込み始める。すっかり熟れた柔肉は、硬いものを難なく飲み込んだ。少しずつ満たされる喜びを感じながら、亜紀はくぐもった声を漏らす。  徐々に入り込んできたものが全て収まったとき、亜紀は唇を離し深い息を吐き出した。力を抜くと、埋め込まれたものの感触がよく分かる。それはまるで、もともとそうであったように、しっくり馴染んだ。  これから先、何が置きようとしているのか分からないだけに、不安は残ったままになっている。しかし、どんなことが待ち受けようとも、和明への思いは決して揺るがない。亜紀は和明の背中に指を食い込ませた。  汗でしっとり濡れた和明の体にしっかりと抱きつくと、深い充足感が体の奥から湧き上がってきた。それは波のように押し寄せてきて、心をすっかり満たしていく。体の深い場所で和明の熱を感じ、満ち足りた気分になってくる。するとそれまで身じろぎ一つしなかった和明が、荒い息を吐きながら腰を突き上げてきた。急に熱杭を穿たれたせいで、快感と衝撃が遅いかかってくる。亜紀は耐えきれず背を反らした。 「ああっ!」  和明は白い尻を荒々しく揉みしだきながら、更に腰を穿つ。それを繰り返されているうちに、意識が溶け始めた。朦朧とする意識のなか、胎の奥に熱が溜まっていく。それはどんどん密度を増しながら、体の中で大きく膨れ上がった。やがて、それが衝撃を伴いながら弾け飛び、亜紀は和明に抱きついたまま、気を失っていた。
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