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第70話

 まどろみにも似た心地よさの中、亜紀はベッドに横たわっていた。  ほっそりとした手足は投げ出されたままになっている。全身はほのかに赤みを帯びていて、汗でしっとりと濡れていた。うつろな目はどこともつかないところに向けられ、ただ宙をさまよっている。  力が抜けた両脚のあいだから、和明がすっと指を抜き抜いた。その指先は、しっかりと濡れていた。てらてらとした粘着質な光を放つ指先をひと舐めすると、和明は女体から体を離す。そして、横たわる彼女を抱き起こし、手早くブラジャーを外したあと、唇を重ねながら再び覆いかぶさった。  ゆっくりとした動きでシーツの上に倒される。まるでそれを待ちわびたように、亜紀は逞しい背中に腕を回した。それは全くの無意識の行動だった。しかも、それだけではない。亜紀は進んで舌先を伸ばし、和明の唇をペロリと舐めた。それに驚いたのか、和明が目を大きくさせる。だが、すぐに気を取り直したのか、口付けを深くした。硬い体に押さえ付けられた柔らかな乳房が押しつぶされる。  亜紀の背中に添えられた大きな手が、するすると腰へ下りていく。そしてショーツにたどり着くと、その手を中に差し込んで、そのまま器用にするりと取り払う。その後、膝を立てた両脚のあいだに、和明は体を割り込ませた。くったりと力が抜けた脚は、それを容易に迎え入れる。  すると突然、和明が唇を離した。濡れた唇に掛かる息がすっかり乱れていることに気づき、眇めた目で和明を見ると、熱を帯びた目を向けられていた。向けられた瞳の奥にある静かな劣情を感じ取り、亜紀はごくりと喉を鳴らす。  首筋に顔を埋められ、そこから胸元へと絶え間なく唇を押しつけられた。触れられたところに生じた熱が、砂が水を吸うように肌の下へと吸い込まれ、体の内側に溜まっていく。体内に溜まる一方の熱のせいで、息苦しくなってきた。  亜紀が熱を吐き出すように浅い呼吸を繰り返しているあいだに、和明は彼女の乳房を両手で掬うように寄せ上げ、あいまに顔を埋めた。大きな手がその感触を確かめるように、やわやわと揉んでいる。その姿は以前にも見たことがある。和明の部屋で初めて抱かれたときだ。亜紀は熱に浮かされたようになりながら、その光景を見つめていた。  幼子(おさなご)が母親に甘えるようにしている姿を見ているうちに、どうしようもないほど愛おしさを感じてしまう。絶頂の余韻が残る体は、女の反応を示している。乳房を揉みし抱かれるたび、双丘のあいまに温かな呼気がかかるたび、確かに体は熱を帯びる。それなのに、心はそうじゃない。母のような優しい気持ちになっていた。体と心が異なる反応を示していることに違和感を抱かないでいられるのは、目の前にいる男を愛しているからだろう。亜紀は和明の乱れた髪に手を伸ばす。指をくぐらせ頭をそっと撫でると、両の乳房の合間に強い痛みが走った。 「ん……っ」  予期せぬ痛みが走ったことで、亜紀は声を詰まらせる。彼女の視線の先にいる和明が、そろそろと体を下にずらし始めた。乳房のふもと、そして形のよい臍。そこへ音を立てながら吸い付き、更に下へと下りていく。  和明が体をずらすと同時に、彼を挟み込んでいるむっちりとした腿が開いた。乳房を持ち上げていた手が、それを更に押し広げる。そこへたどり着き、開いた腿の内側に和明が唇を押しつける。そのとき、和明と目が合った。熱っぽい瞳を向けられる。その姿は、得も言われぬ程扇情的なものだった。亜紀が見つめる先で、和明が柔い内ももに歯を立てる。痛みはない、軽く食まれたような感触だった。  そして、唇が腿をたどってゆっくりと下りていく。その様子を追うと、脚の付け根にたどり着いた。亜紀はとっさに身構える。その直後、空気に晒されたところに熱いものが触れた。それが舌だと頭が理解する前に背が勝手にしなり、開いた唇から声にならない吐息が漏れた。舐められたところが、勝手に疼き出す。  強烈な快感ではないけれど、断続的に与え続けられる微弱な快感ほど辛いものはない。亜紀は全身を上気させながら、掴んだシーツをぎゅっと握り締めた。汗で髪が張り付いた喉をのけぞらし、枕に頭を押しつける。潤んだ瞳は焦点が定まらず、開いた唇からは絶え間なく吐息と喘ぎが漏れていた。  肉厚な舌に舐め上げられるたび、疼きはますます酷くなった。絶え間なく淫蜜が漏れ出すところは、すっかり充血しふっくらと盛り上がっていた。溢れるものをひとしきり舐め取られたあと、尖った舌先が柔らかい肉をかきわけながらゆっくりと差し込まれる。その感触に驚いて、亜紀はとっさに腰を引こうとしたけれど、尻を掴んでいる大きな手がそれを阻む。  どうにかして逃げようともがく亜紀の秘所に口淫しながら、和明は穿いているスラックスを器用に脱ぎだした。続いて下着も取り払うと、すっかり硬くなった雄があらわになった。隆々とそそり立つそれは、腹にくっつきそうなほど反り返っている。根元からは太い筋が浮き出ており、どくどくと脈打っていた。しみ出したしずくが、先端をわずかに濡らしている。それを手で支え持ちながら、和明が顔を上げた。  浅い呼吸を繰り返す唇は、愛蜜で濡れている。亜紀がシーツを握りしめていることに気づいたのか、和明は両手を伸ばし小さな手を握りしめる。そして、再び顔を埋め、尖らせた舌を差し込ませた。音を立てながら抜き差しを繰り返す。小さな手が大きな手を強く握りしめる。  抜き差しをされるたび、腰から力が抜けていく。肩に担がれた脚は、その動きに合わせて痙攣ばかり繰り返す。丸まったつま先が宙を掻いた。亜紀は顔を恍惚とさせながら、鼻に掛かった甘い声ばかり漏らしている。  するとそれまで舌を抜き差ししていたところに、細い指がすっと差し込まれる。そして、包まれていたものから顔を覗かせている肉芽に、熱い舌が這わされた。  敏感な突起をなぞっていた舌先が、急にそれを押しつぶした。それだけでなく、形のよい唇がふくらんだものを挟み、強い力で吸い上げる。差し込んだ指は抜き差しを止めないばかりか、亜紀の弱いところを責め立てる。  二つの異なる刺激が突然襲いかかってきて、亜紀は目を大きく見開いた。指を絡ませた大きな手を強く握りしめると、それに応えるように握り返される。それとほぼ時を同じくして、強烈な快感が押し寄せてきた。  それは今まで味わった絶頂のものとは明らかに異なっていた。指が中をまさぐるたびに、尿意に似たものがせり上がってくる。未知なる感覚に亜紀はおののいた。だが、指は執拗に彼女を追い詰める。  本能的に体がこわばる。体が勝手に震えだし、膝がガクガクとし始めた。亜紀はぎゅっと目を閉じて、かぶりを横に振りまくる。しかし、その甲斐なく、再び絶頂に押し上げられた。
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