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第13話

なるべく彼の方を見ないようにしながら、一度大きく深呼吸をして、私は続けた。 「分かってる。本当は、逃げずにちゃんと役目を果たさなくてはならないって。そういう契約だからね。……でも、どうして美織なの?」 少し待ってみるも、彼の口からその答えが発せられることはなかった。 「美織のことはよく知らないけれど、彼女はきっと優しいんでしょうね。見るからに深窓のお姫様って感じだもの。さらに、身体が弱いなんて。私が男でも好きになるなぁ」 一粒の涙が溢れて、私は醜く笑った。 「だけど、そんな彼女を狡いと思ってしまうのが女の私。父親も、財力も、仕事まで奪った彼女に、この子まで奪われなくちゃいけないの……?」 ……あなたが私に触れた証でもあるのに。 さすがにその言葉までは言えなくて、私はぎゅっと目を瞑り、血の滲むまで唇を噛み締めた。 そのあと、布擦れの音がして彼の気配が消えた。 目を開けると、既に鏡夜の姿はそこにはなかった。 結局、彼は何も言わなかった。 絶望に震える身体を無理矢理起こして、私は本郷家に帰ることにした。 悪足掻きはここまでだ。
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