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第5話・蜘蛛に食べられた蜘蛛

「えー、と……?」  幸がお風呂に入っている間に、昼間干した布団を敷いた。上がってきたそのまま、バスタオル一枚のみで来た幸を布団に押し倒した。まだこの状況を把握出来ていない幸は戸惑っている。 「幸、ボクだって男だよ」 「……冬馬」 「最近、幸が忙しいのも知ってる。でも、家に来ると分かってて、泊まると分かってて、ご飯食べてはいおやすみ、なんて無理」  幸が持ってきた紙袋たちの中身も、多分持ち帰った仕事関係だろう。いつまで休みかは聞かなかったけど、進行の合間を縫ってきたであろうことはボクにも分かった。それでも好きな相手が、蜘蛛の巣にかかった蝶のように目の前に据え膳状態なのだから。 「ねぇ幸、なんのためにボクがいるの?」  バスタオルをずらして、形のいい膨らみを晒す。お風呂のせいとは言いきれない桃色の肌に、自分も体が熱くなるのを感じた。 「冬馬……待って」 「なんのために、ここに部屋借りて、オシャレな女子みたいなレイアウトしたと思う?」  幸の言葉を聞くまでキスはしない。片方の手で膨らみを揉みしだいて、突起をつまめば、それだけで幸の体は快感に震え、意味のある単語を発せない。 「幸、」 「――……じゃない」 「え?」 「知らないわけないじゃない! 全部、全部――」  幸が何かを言う前に、その口を塞いだ。 「そうだよ、幸と一緒にいたいからに決まってる。幸はオシャレだから、レイアウトも使うものも、全部オシャレにしないといけないんだ」  窓際にある観葉植物は、幸が『緑のある部屋がいい』って言ったから。システムキッチンや家具は大手海外ブランドのショールームで、食器たちは前のデートの時に雑貨屋で幸が必死に値札とにらめっこしていたもの。 「ボクは幸以外いらない」 「冬馬……」 「知ってたでしょ? 本当にいらない」  だから幸が来ないと部屋は荒れるし、家から出ないし、何も出来ない。 「でも、幸のことは、全部やらなきゃ」 好きなものを揃えて、好きなものを食べさせて、うんと気持ちよくしてあげて。 「そう思ってる」 「……バカだね、冬馬」  幸が泣きそうな顔で微笑んだ。違う、そんな顔が見たかったんじゃない。 「言ったでしょ、知らないわけないって」  混乱したまま幸からキスされた。 「年下らしく、オネエサンに任せなさい」
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