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第4話・蜘蛛の巣に

「い、いらっしゃい」  ぎこちない笑顔を貼り付けて、ボクは玄関を開けた。正面には沢山の紙袋やカバンを持った幸が笑顔で立っていた。 「おじゃましまーす」  適当に靴を脱ぎ捨ててそのままズカズカとリビングに進む幸を、その靴を揃えてあとから追いかける。 「あ、いい匂い!」  ソファに荷物を放り投げて、コートを脱ぎながら幸はキッチンに入った。床に落ちるコートを急いで拾ってソファの背にかけたら、「ハンガーにかけてよ」と怒られた。幸はハンガーを取りに行くボクを尻目にコンロの鍋の蓋を持ち上げ、白い視界に口角がぐっと上がるのがチラリと見えた。 「美味しそう……ねぇ冬馬、食べていい?」 「え、今から?」 「もちろん!」  幸の提案はいつも唐突だ。ウチに来ることも、ご飯を食べるタイミングも。 「外すごく寒かったし、食べてあったまりたいかなーって。それに、お昼抜いたからお腹空いてるんだよね」  勝手にコンロのスイッチを入れて鍋を温め始めた。シチューがわたしを呼んでいる、と言わんばかりに、勝手に食器棚を開けてお皿とスプーンを二つづつ取り出した。あ、一応ボクも一緒に食べていいのかな。  テーブルを布巾で拭いて、クロスを敷く。スプーンを先に貰ってクロスの上に置いた。 「はい、冬馬」  幸が差し出したシチューの盛られたお皿も受け取ってクロスの上に。時計はまだ18時にすらなっていないが、シチューの匂いにお腹が反応してグルグルと鳴った。 「冬馬もお腹空いてるんじゃん」 「あ、はは……そう言えばボクも食べてなかった」 「そうなの?」 「……掃除に必死だったから」 「そう言えば綺麗だね」  今の今までスルーかよ。ソファに座って、同時に手を合わせた。 「いただきます」  一口食べて、幸が今日一番の笑顔を見せた。味もクリアみたいだ。あっという間にお皿が空になって、二杯目をよそいに立ち上がった。 「美味しい?」 「ムカつくくらいね。まずかったらお代わりしないよ」  一杯目と変わらない量がお皿に入っていて、幸はそれもペロリと完食した。 「ねぇ幸」 「ん?」 「今日、泊まる?」 「あぁ、うん、そのつもり」 「そか。じゃあお風呂もタイマーで沸かしてるから入っておいでよ」  ボクの言葉に、幸の目がパチクリと丸く固まる。 「ボクは筋トレして先に入ったから。お湯は張りなおしたから汚くないよ」  ポカンと空のお皿を持ったまま動きを止めた幸に、ボクは手を振った。  ボクだって、いつまでも尻に敷かれっぱなしじゃないよ。
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