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会えない時間に、募る想い

交際を始めて二週感が経った。 朱音はホリデーシーズンの百貨店で慌ただしく働き、桐島も仕事が忙しいようで、想いを伝えた日から会えずにいる。 お互い時間を見つけては電話で話しているけれど、それだけでは満たされない。 つい半月前までは、好きだと認めたくなくて、自覚しても想いを告げるタイミングを見つけられずうじうじしていたというのに、恋人だと思うと寂しく感じてしまう。 きっと桐島は、朱音が会いたいと言えば5分でも時間を作って会いに来てくれるだろうが、自分より忙しくしているであろう彼の負担に、なりたくない。 朱音が会えないを寂しく感じても不安に思わない。 桐島のストレートな愛情表現のおかげだ。 自分も彼が不安に思わないだけ想いを伝えられていると、自身をもって言えないことはもどかしいが、今の朱音に出来る範囲で、努力して伝えるようにしている。 「朱音ちゃん。最近はどう?まだ忙しい?」 「うーーん。限定品はほとんど売れちゃったから、少し落ち着いたけど。  でも、この時期はまだまだ、お客さんは途切れないかなぁ。」 クリスマスコフレや秋冬の限定コスメなどが売り出され、11月の終わりから化粧品業界は繁忙期になる。 それに加えて年末まで、プレゼントや自分へのご褒美にと買いに来るお客様が絶えない。 さらに年が明ければまた、春の限定品が出る。 「僕も。なんだかバタバタとしていて。朱音ちゃんに会えなくて、寂しいよ。  せっかく両想いになれたのに。」 「…私も。私も寂しい。」 「素直に寂しいなんて言われてしまったら、我慢できなくなってしまうよ。」 「…我慢、しなくていいのに。」 「今すぐ飛んで行けたらなぁ。。。僕、いま何処にいると思う?」 桐島は心底残念そうな声で言う。 「え?東京にいないの?」 「うん。いま台湾なんだ。」 「え!?日本にいないの?」 「仕事でね。東京に戻れるの、12月後半になっちゃうかなぁ。  クリスマスは朱音ちゃんと一緒に過ごしたいから、頑張って仕事終わらせて帰る予定。  お土産は何がいい?」 「クリスマスまで…」 クリスマスに一緒に過ごしたいと言ってくれるのは嬉しいが、桐島の言葉は、後2週間弱会えないということだし、最悪、帰国がクリスマスを過ぎる可能性があるということだ。 「台湾土産って、なにが有名なの?私、ぜんぜん知らなくて。」 少し明るめの声で、朱音は言った。 「うーーーん。パイナップルケーキとか、よく見るかなぁ?  朱音ちゃん、甘いもの好きだよね。  …寂しい思いをさせてごめんね。」 その一言で、泣きそうになった。 「甘いものは好きだけど…パイナップルケーキ、私、食べたことない。  と言うか、台湾のこと何にも知らないや。」 「口の中の水分を全部取られちゃう系のスイーツだよ。  僕は苦手なんだけどね。」 「それなら、買ってこなくて良いよ。  桐島さんが、無事に帰って来てくれればそれで。」 「りょーかい。何か良さそうなものが有ったら、買って帰るよ。  朱音ちゃんのところに。」
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