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素直になる

「桐島さん。私、桐島さんの事を好きになってしまったみたいです。」 舞子と会った三日後、桐島に食事に誘われた。 こんなにも早く想いを告げるタイミングが来てしまった事に戸惑ったが、決意が揺らぐ前に。と決意し、半分勢い任せで言葉にしたら、桐島は想像以上に嬉しそうな顔をしてみせた。 「ありがとう。朱音ちゃんの事、心から、大切にするよ。」 そう言うと、桐島は朱音の手を取り、手の甲に唇を落とした。 それは女性が憧れるハリウッド映画のワンシーンのようで、彼はまるでおとぎ話の王子様に見えた。 「…王子様みたい。」 ふと、心の中で思っていた言葉が口に出た。 思わず声に出てしまった柄にもないセリフに、一瞬で自分の顔が赤くなるのが分かった。 「僕は、朱音ちゃんの王子だよ。そして朱音ちゃんは僕のお姫様だ。  僕にうんと愛され、甘やかされ、大切にさせてね。」 桐島は朱音を愛おしそうに見つめ、ほほ笑む。 「よろしくお願いします…」 素直に気持ちを伝えただけなのに、心のしこりが取れたような、心が晴れるような気持になる。 好きな人と気持ちを通じ合える、好きな人の好意を素直に受け止められるということが、どれほど幸せなことなのか、すっかり忘れてしまっていたことに気づいた。 「素直に照れている朱音ちゃんも可愛いねぇ。」 「…そういうこと、恥ずかしいから言わないでください。」 「でも、僕は朱音ちゃんへの想いを止められない。  可愛いと思ったら伝えたいし、愛おしいと思ったら愛してしまうよ。」 嬉々とした笑顔で話す桐島を見て、朱音は諦める。 愛を伝えてくれるのは嬉しいが、控えめにしてほしい。 「…お手柔らかにお願いします。」 「ふふふっ。これから楽しみだね。」 …もしかしたら、とんでもない人を好きになってしまったのかもしれない。
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