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気持ちと向き合う時

桐島と朱音は、それから何度か食事を共にした。 朱音は正直、桐島瑠衣という男に惹かれている。 が、口説かれる度に、頑なに付き合う気はないと言っていた朱音は、素直になるタイミングを掴めずにいる。 「ねぇ舞子、どうしたら良いかな?」 朱音の相談相手は、親友の舞子だ。 舞子は美容学校からの友人で、職場やブランドは違うが美容部員として働いている。 お互い職場の相談や愚痴も話せる相手で、決まった約束はしていないが月に2,3回ほど、仕事終わりに食事をしている。 「朱音は?もうその彼のこと、好きなの?」 「うん…。これと言って、好きになるタイミングは無かったはずなんだけど…  なんだかね、会って話をしている内に。」 「それが、一番素敵じゃない!  話していて、なんか好きだな。一緒に居たいな。  そう思えるって大事よね。  そりゃぁ、お金も見た目も最低限必要だけど。」 「舞子も、彼と順調なんでしょ?」 「うちはね。長いもん。相変わらず、だよ。」 舞子の恋人は、学生時代に出会って3歳年上のバーテンダーだ。 生活時間の違う仕事をしている2人だが、一緒に過ごせる時間を大切にしたいと、舞子が就職したタイミングで同棲を始め、結婚も近い内に考えていると言う。 「20歳そこそこで長く想い合っていられる人と出会えた事、素直に羨ましいよ。」 「ふふっ。ありがとう。  朱音の、そういう照れ臭いセルフを恥ずかしげもなく言えるとこ、好きよ。」 「え、照れ臭いセリフかな?」 「私なら、照れちゃうかな。彼にも素直になりなよ。」 「…それとこれは、別だもん。」 「ていうか、朱音、わかりやすいもん。  多分、もう好きになっちゃった事、バレてるよ。」 「うそ!?何それ恥ずかしい!!!」 「大丈夫。元々口説かれている訳だし、素直に甘えて愛してもらえばいーんだよ。  大切なのは傷つく心配より、自分が相手を好きかどうか。だよ。」 「…そうだね。そろそろ素直になろうかな。」 好きな人に、大切にしてもらいたい。愛されたい。誰もがそうだろう。 同時に、それが簡単な事ではないことは誰もが知っている。 だからこそ相手を信じて大丈夫か不安になるし、新しい恋に臆病にもなる。 だからって、踏み出さない事には愛される事はない。 「人間って、どうしてこんなに面倒なんだろうね。  もっとわかりやすく、‘‘〇〇の運命の人‘‘って首から社員証みたいにぶら下げていてくれたらいいにに。」 「あはは!それは確かに!  ね、次会う時には朱音のお祝いだからね?  今度彼と食事に行くときは、ちゃんと気持ち伝えるんだよ!」 「はぁ~い。舞子に、良い報告できるよう頑張るから、期待しててね。」
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