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出会い

私、南朱音は銀座の百貨店で働く美容部員。 勤務地柄もあり仕事時は、カラーリングのしていない黒髪を綺麗に夜会巻きにし、キチンと仕上げられた化粧は実年齢よりも大人っぽく魅せる。 美容学校を卒業して早三年。仕事は順調。 社会人になってすぐにした失恋を引きずって、恋愛は暫く休んでいたが、そろそろ恋も良いかもしれない。 そう考えていた頃だった。 「僕の、お姫様になってくれませんか?」 仕事の休憩中によく利用するカフェの、テラス席でコーヒーを飲んでいた時だ。 透明感のあるブラウンの暗髪に、吸い込まれそうになるへーヘーゼルカラーの瞳。 すっと綺麗に筋の通った鼻の下には、淡い色をした薄めの唇がバランス良く配置されている。 身長も高いのだろう。 手足は長く、まるで海外モデルのような男が自分に向かって跪いている。 「間に合っています。」 朱音は、一瞬驚いた顔をして、すぐに笑顔を作りお断りをした。 外国人、もしくはハーフに見えるその男は朱音の返事にめげないどころか、返事をしてしまったため相手にしてもらえると思ったのだろう、向かい席に座ってくる。 「いきなり声をかけてしまってごめんね。僕は、桐島瑠衣。はい。これ名刺。」 上品な笑顔と共に渡された名刺には、毎朝ニュースを流し見るだけの朱音ですら聞き覚えのある最近株価が一部上場したと話題の若手企業名の下に、名前と‘‘代表取締役‘‘と書かれている。 (あ…日本人ネーム。外国人ではないのかな?) 「ネットで会社のホームページを見てもらえれば、僕の写真も載っているよ。怪しい男じゃないから安心して。」 目の前の男が嘘をついているようには見えないし、話題企業の代表がこんなにも色男だなんて…とも思ったが、昼間からナンパしている男と付き合いたいとは思わない。 それに、久しぶりの恋をする相手なら尚更、安心できる人が良い。 「軟派な男性には、興味ないんです。失礼します。」 桐島という男に負けない笑顔を残し、朱音は店を後にした。
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