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第17話

 ***  それから半年後。  正義はうたのお兄さんを続けることが出来た。  会議が結婚してしまったこと、それ自体はおめでたいことだが『うたのお兄さん』ではなくなってしまう、そのことがかなりマイナスのイメージになるとかなり問題になったそうだが、プロデューサーがかなり押してくれたらしく、正義はうたのお兄さんとして続けることが出来たのだ。  騒ぎ立てた週刊誌も、インターネットも、テレビも、ほとぼりが冷めれば新たなターゲットを見つけて騒ぎだして、正義のことを嗅ぎ回らなくなった。  しかし、一か月近くはさくらの家に正義は住み、その間はキスだけ。  正義が猛烈に夜毎に迫ってきたことを思うと、その一か月は互いに禁欲かのように静かに眠る事しか出来なかった。 『さくらの実家だから』  そう言って、すぐに眠る正義の背中を見つめる日々は辛かった。  子供が欲しい、そう言ってくれた矢先に体を重ねることすらなくなることが切なく苦しい日々でもあり、さくら自身が正義に抱きついてしまうこともあった。  けれど、正義から長いキスだけされて終わり頭をゆっくりと撫でられると、そのまま抱き寄せられて終わってしまう。  このまま実家で居候なんていやだと思ったが、正義はうたのお兄さんとして働くことができ、そしてマスコミに騒ぎ立てられる日々も終わった。  が、世間の正義のイメージは清廉潔白なお兄さんから、どこか裏もありそうなおじさん。  というよな、極々その辺にいるような人と同じじゃないか、なんて噂がちらほら出始めていた。  無意識に正義関係のことを調べると、応援はするけれど、こそこそとしていたことにガッカリ。  そんな事を書かれていて、完全に正義のイメージはダウンしていた。 (こそこそしなきゃ、付き合いなんて出来ないし、ましてや結婚だって無理だもの)  ぶ然としてネットの記事を読む。  しかも、自分達の情報を流した人間もまだ分からないのだ。  手当たり次第に聞いて回ったが、正義は子供向けの番組で活躍するだけであって、ライブや舞台などの活躍はしていない。  貶める意味がないと、怒られる始末だった。  辞めてしまったピアノ教室にも聞いてみたかったが、勇気が出ずにいる。  テレビで当たり前に笑う正義だったが、子供の前に現れると、結婚について訊いて来る子もいるらしい。  子供にタブーは通じなく、それを答えるのも一苦労で、今はなんとかかわす方法を模索中だった。  マンションに戻ることが出来たさくらだったが、週刊誌に張り込みされたことをもう一度思い出してみる。  マンションの名義もさくらだし、引っ越しは身うち。  宅配などはさくらが受け取っていたし、正義の部屋がここだとバレる理由も分からない。  さくらは頭を抱えるものの、どこか近しい人間が情報を流したような気がして、さくらは怖くなっていた。 (ピアノ教室……)  どこか引っかかっているのはそこだった。  もう辞めて別の先生を雇っているだろうが、どこかで偶然にでも正義と一緒にいるところを見られていたら?  そう考えると、嫉妬にまみれたママはさくらを陥れる為に週刊誌に情報提供なんて、容易いように思う。  なにせ、あの熱の入れようだ。  とはいえ、本当にそうかは分からない。
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