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第15話
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子供達との収録の中、スタッフがいつもとは違う、慌てているような動きになり、正義はなんだろうと視線を動かした。
あまり気を散らすと、子供まで気がそがれてしまう為に笑みを作ったままだ。
収録が終わるなり、プロデューサーから手招きされてドキリとする。
自分の何かが悪かったろうかと思い返すが、失敗はなかったように思う。
「正義さん。外に記者がいるんだ」
「記者? どうして?」
「君、隠れて恋愛か何かしただろう? 噂じゃ、結婚したって嗅ぎまわってるらしいけど」
「あ……の」
事実を言い当てられて、固まってしまった。
何でも言い合える関係を作りあげるのに、今まで苦労したし、我慢もした。
でも、その代りに犠牲にしたのが自分の恋愛や私生活だと思っている。
勿論、代えがたいものを子供から与えてもらっているし、満足いく仕事をさせてもらえている。
けれどさくらと出会い、そしてこっそりと付き合ううちに、自分も人並みの家庭を築きたいと思うようになったのだ。
いつかは……とは思った。
けれど、さくらが待っててくれるか分からないし、自分に価値があるのは今だけかもしれない。
もしかしたら、さくらだって『うたのお兄さん』としての正義を好きなのかもしれない。
そんなことを思うと、日常で振舞う姿は優しさよりも自分のわがままを通したかった。
嫌われるかもしれないとも思ったが、さくらがもしも嫌うなら、きっと恋愛は無理なんだろうと思った。
テレビでの印象と、日常が違う。
でも、俺はいつだって優しいわけじゃない。
「お付き合いしている人がいました。今は、結婚して一緒に住んでいます」
勢いに任せて言っていた。
勿論、仕事において自分がしたことは裏切りだろう。
でも、プロデューサーが言ったことは違った。
「それは構わない。が、イメージがある。私達が正義くんを理解していても、世間のママや子供達は、それを受け入れられるだろうか」
「そう……ですが」
「どうする? 週刊誌の記者に全てを正直に話すかい?」
プロデューサーの目は真剣だった。
でも、正直なところ週刊誌の記者に話しても解決するとは思えない。
かといって、うたのお兄さんが記者会見を開くなど、あり得ない。
「自分の言葉で説明出来ないでしょうか」
「それは……。まあ、出来ないことはないだろうけれど。そもそも、信じてくれるか分からないだろ?」
「でも、自分のしたことが間違っているなんて思いたくはありません。確かに、仕事をする人間としては間違ってしまったかもしれないけれど」
俺は項垂れた。
昨夜、貪るようにさくらを求め、子供が欲しいとまで言ったのに、今はプロデューサー相手に言葉が上手く出てこない。
本当は、子供も欲しいとすら思っている、そこまで言いたい。
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