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Act.2-01

 それから三十分ほどで、ようやく仕事が片付いた。  本来ならばもっと時間がかかっていたところだけど、椎名課長も責任を感じたのか、最後まで手伝ってくれた。 「助かりました、椎名課長」  深々と頭を下げてお礼を言うと、椎名課長は、「いや」と首を横に振る。 「元はといえば、俺が無理難題を押し付けたんだ。全く俺はいつまでもガキだな。好きな女を苛めるなんて小学生と同じだ」 「そうですね」 「――否定しないのか……」 「否定しようがないですもん」 「やれやれ……」  椎名課長に告白されて、急に形勢逆転した気がする。  とはいえ、仕事上では椎名課長の方が立場が上だから、これからも、仕事を命じられれば口答えしないで素直に応じる。 「藤森」  最寄り駅まで一緒に並んで歩きながら、椎名課長が口を突いた。 「明日の休み、映画を観に行かないか?」  突然のお誘いに、私は答えるのも忘れ、ポカンとして椎名課長を見上げてしまった。  それで誤解をさせてしまったらしい。  椎名課長はちょっと慌てた様子で、「いや、その」と続ける。 「別に疚しい気持ちはないんだ。つまりあれだ、『お試し期間』というか……」  『お試し期間』という言葉に、私は噴き出してしまった。  悪いとは思いつつ、我慢出来なくて笑い続けた。 「笑い過ぎだ……」  不満を露わにする椎名課長に、私の笑いのツボはさらに刺激される。  普段が普段だから、可愛い反応は反則だ。
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