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Act.1-06

「椎名課長……」  私は訥々と言葉を紡いだ。 「椎名課長の気持ち、嬉しいです、とても。でも、突然のことで、私は椎名課長の想いにすぐに応えることは出来ません」 「ああ、分かってる」  椎名課長は相変わらず、私の両手を包んだまま、柔らかな笑みを浮かべた。 「俺はただ、藤森に俺の本心を伝えたかっただけだ。それが届いただけでも充分だと思ってる。でも……」  椎名課長は少しばかり間を置き、続ける。 「藤森さえ良ければ、俺とのことを前向きに考えてくれないか? もちろん、他に好きな男がいるなら話は別だが、もし、そういう相手がいないならば……」  不器用な人なんだな。  私は思った。  多分、とても真面目だからこそ、他の男性のように気軽に振る舞えないのだろう。  私は空いていた左手を椎名課長の両手に重ねた。 「ゆっくり、考えさせてもらっていいですか?」  私が言うと、椎名課長はわずかに目を見開いた。  そして、これまでに見たことのない満面の笑みを私に向けてきた。 「ゆっくり待とう」  椎名課長は、私の右手を強く握った。
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