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Act.1-05

 と、椎名課長の手の力が緩んだ。 「――すまない……」  掠れた声で、私に謝罪してきた。  解放されたのに、私は逃げるのも忘れ、ぼんやりと椎名課長を見つめた。  椎名課長は眉根を寄せながら微苦笑を浮かべている。 「これじゃあ嫌われて当然だ。俺は本気になった女に対してどうしても素直に振る舞えない。それでいて、自分で呆れるほど独占欲が強い。他の男と親しげにしているのを見ているだけでイライラするんだからな……」  椎名課長はそこまで言うと、肉まんを持ったままの私の右手を、椎名課長の両手でそっと包み込んできた。 「俺はお前を決して嫌っていない。むしろ独り占めしたいぐらいだ。お前がどうしようもなく気になって、だからつい、必要以上にきつく当たってしまう。――ほんとは、そんな俺自身が一番腹立たしくて仕方ない。藤森に辛く当たったあとは、密かに自己嫌悪にも陥ってた……」  私は黙って椎名課長の言葉に耳を傾けていた。  正直、驚くことばかりで、どうリアクションしていいか分からない。  けれど、今まで私に厳しかったことが愛情の裏返しだったことを改めて知り、自分の想いを素直に表現出来ないこの人に愛おしい感情を抱いたのも確かだった。  中間管理職という辛い立場、けれど、弱音を吐けるような相手もいない。  誰かひとりでも支えてくれる存在がいれば、椎名課長も少しは救われるのかもしれない。  でも、私もおいそれと椎名課長の想いに応えることは出来ない。  好意を寄せられていたことは素直に嬉しいけれど、すぐに椎名課長の胸に飛び込めるほど器用ではない。
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