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プロローグ-1

 燭台に灯った炎が、じり……と音を立てて揺れた。  室内は静かなものだ。王都の喧噪から少し離れた位置にあるこの屋敷は、太陽が落ちると虫の鳴き声くらいしか聞こえてはこない。  そして、甘い花の香りが漂う室内には、二つの呼吸音と布がこすれる音――時折引きつるような、少女の喘ぎ声だけが響いていた。 「っ……は、ァ――」  波打つシーツの上に、白い裸体が浮かび上がっている。ほっそりとした指先を空へと伸ばした彼女は、切なげに男の名を呼んだ。 「エルキュール……様」  かすれた声で愛しい人の名を呼ぶ。そうすると、それに応えるように彼女の中の熱が質量を増した。深い場所に埋められている欲望が、甘く狂おしいほどに彼女を快楽の淵に追いやっていく。 「ぁ、あぁ……っ! は、ぅ」  くぷっと空気が混じる音がして、少女の中は熱い雄根に満たされていく。呼吸音だけが交わる静かな室内で、エルキュールと呼ばれた男はその様子に目を細めてみせた。 「イリス」  低く落ち着いた声が、イリスのすべてを揺さぶっていく。  見上げれば、夜を閉じ込めたような漆黒の瞳が情欲の炎を灯してイリスを見下ろしていた。  ゆっくりとイリスが口を開くと、彼は覆い被さるようにしてその唇を塞ぐ。長い舌先が歯列をなぞり、味わうようにイリスの舌先にも絡められる。 「ん……っ、ふ、ぁ――ァ、んぅっ」  ちゅく、と淫靡に唾液が絡まる音は、イリスの鼓膜を揺らして思考を絡め取っていく。  長く甘いくちづけは幸福だった。時間が止まって、このままずっとこうしていられたらいいと、イリスは心の底からそう思う。  エルキュールは美しく、優しい男だった。幼い自分と婚約を結んだ時も、彼はイリスを一人の淑女として受け入れてくれたのだ。 「君は――……美しくなった」  ちゅ、と音を立てて唇が離れると、エルキュールは唾液で濡れた唇をイリスの胸元へと寄せた。心臓にほど近い場所で囁かれる彼の声はとても優しい。  けれど、その声には隠しきれない切なさが滲んでいる。  ようやく自分たちは夫婦になることができたのだ。イリスが少し強引だったとはいえ、両者の結婚はもう何年も前から決まっていたことだった。 「君は美しい。イリス……二年前から、君はなにひとつ変わらない」  エルキュールの骨張った指が、イリスの肩に触れた。  節くれだった指の関節に、堅くなった剣だこ。そしてその手のひらは、触れられた場所から溶けてしまいそうなほど熱かった。 「あなた、も……変わらないわ。エルキュール様――髪は、少し伸びたようだけれど……」  ややうわずった声で、イリスはエルキュールに笑いかけた。暗い室内に降り注ぐ月光が、彼女の美しい金髪を浮かび上がらせる。 「変わらない、か……さて、どうだったかな」 「ぁ、んんっ!」  含み笑うと、エルキュールは柔らかなイリスの胸に吸いついた。  やや勃ち上がった先端の蕾を、前歯で柔く食んでいく。そうするとぴりりとした甘い痺れがそこに湧き上がり、イリスは思わずあえかな声を上げた。 「あっ……ひ……ぁあっ……!」  ぬるんだ舌が、イリスの柔肌を押すようにして刺激を加えていく。  白い彼女の肌はわずかに赤くなり、潤んだ瞳はなす術もなくエルキュールを見つめることしかできない。 「やぁっ――だめ、そこ……ばっかり……!」 「おや? それならば我が妻はどこに触れられるのがお好みなのかな」  長い彼の指が、そっとイリスの太腿に触れる。  軽く触られただけで背筋からゾクゾクと喜悦が駆け上ってくるのを、イリスは熱い息を吐いて耐えた。  エルキュールに触れられると、その場所が火傷をしたように熱くなるのだ。だが本物の火傷のように、痛みを伴うわけではない。イリスにとってはそれよりももっと悪かった。  彼にもっと触れてほしいという浅ましい願いが、彼女の心中でどんどん大きくなっていく。 「あぁ――そうだった。忘れていたよ……イリス、君はこの場所を強く穿たれるのが、好きなんだったか」 「ひ――ぁあんっ!」  すでに膣奥まで挿入されていた肉塊が、思い出したようにゆっくりと動かされる。  深い場所まで埋められていたそれは徐々に引き抜かれていくが、張った傘の部分がイリスの弱い場所を掠めていく。  溢れる嬌声を止める術も知らぬまま、イリスはただ彼を受け止めるしかなかった。 「あっ、ぁ……ふか、ぃ……!」  浅い位置から時間をかけてイリスの中に全て収まった彼の肉楔は、また焦らすような速度で引き戻される。  じっくりと、柔い襞を堪能するようなその動きに、イリスは肩をわななかせた。 「はぁ、ぁ……ん、くぅ……」 「物足りなさそうだ。イリス――」 「な、あぁ……! エル、ク……!」
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