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触れる体温-7

「――そうか」  そうして彼は確かに笑った。月明かりに照らされた淡い笑みに、イリスは一瞬呼吸をすることを忘れてしまった。  だが次の瞬間、熱い――指先とは比べられないほどの質量が、イリスの体を割る。 「ァ――……!」 「辛い、か」  イリスの蜜壺を埋め尽くす、熱い剛直。ゆっくりとそれを勧めるエルキュールは、目を見開き浅い呼吸を繰り返すイリスの体をそっと抱き寄せた。  一方で、イリスはただただ呼吸をするだけで精一杯だ。体が盾に引き裂かれたのではないかと思うほどの衝撃と、鈍い痛み。そして秘処から体じゅうを駆け回る、甘美な痺れが、彼女の意識をぐらぐらと揺さぶってくる。 「ふ、っ……ぁ、エルク……」 「……すまない。イリス」  鼓膜を揺らす彼の声が、吐息が、かすかに熱い。  痛みと愉悦でおぼろげな頭でそんなことを思いながら、イリスはゆるゆると彼の背中に手を回した。この痛みは、愛しい人から与えられるもの。そう思いはしたものの、やはり下腹は苦しいし、深い呼吸ができない。 「力を、入れないでくれ。……どうにも苦しい」 「で、でも――ァ、これっ……」  力を入れるなと言われても、イリスにはどうしたら良いのかがわからない。打ち上げられた魚のように口を開閉させるイリスだったが、やがて痛みの波が収まるとエルキュールはゆっくりとした律動を刻みだした。 「はぅ、ぅ――きゃ、ぁッ……!」  ゆっくりと、彼の尖端が蜜壺の奥へと突き立てられる。緩慢な動きではあったが、逞しいそれはイリスの感じる場所を何度も擦りあげた。  その度に、彼女の唇からは意図せぬ悲鳴がこぼれ落ちる。 「ひぁ、ぁんっ! は……ぁっ」 「ん……いい子だ。そのまま――そう、しっかり呼吸を」  ぐちゅ、と耳を塞ぎたくなるような耳音が、暗い寝室の中に響く。  最奥をコツンとノックされると、一層強い刺激がイリスの体を満たしていく。 「あ、ぁっ……! っん、ふっ……」 「イリス――」  慟哭するような、彼の声。なにをそんなに悲しんでいるのか、どうしてそんなに、苦しそうな顔をするのか。イリスにはそれがわからない。 「なか、ないで」  まるで今にも泣き出しそうな子供のように眉を寄せたエルキュールの頬にキスをすると、彼は驚いたように目を見開いた。 「……泣いてなど、いないが」  月明かりのせいかもしれないと的外れなことを言う彼の横顔は、それでもどこか苦しげだった。結局、彼はその原因をイリスに教えてはくれないのだ。 「そう、ですか?」  その表情に、イリスはまた自分が突き放されてしまったような気分になった。体を交わし、これだけ近くにいるのに――また、エルキュールが遠くなってしまう。  それでも、立ちこめてきた厚い雲が清かな月を隠すまで、二人は互いを確かめ合うように体を重ね合っていた。
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