5 / 5

第5話

「ん……んぅ~」  ゆっくりと瞼を開ける、どうやら少し眠っていたらしい。大きく伸びをして、ベッドから起き上がった。ずるっとかけてあった布団が落ち、素肌をくすぐった。俺の隣で同じように横になっていたはず美沙子さんは、すでに部屋着に着替えて、台所でコーヒーと淹れ直していた。そっと忍び寄り、背中から美沙子さんを抱きしめる。 「なんで服着ちゃってるの?」 「だって……」 「恥ずかしい?」  美沙子さんは、コクンと頷く。その仕草も可愛くって、頬にキスをすると美沙子さんはくすぐったそうに首をすくめた。 「あ、あのね、瀬戸くん」  俺の名を呼ぶ美沙子さんの声は、上ずっていて大分堅苦しい。 「なに?」 「あの……その、あのね」  随分と歯切れが悪い。腕に力を少しだけ込めて、促すように体を小さく揺らした。 「もしかして、痛かった?」 「あの、そう言う訳じゃないの! ……これ」  美沙子さんは俺の腕の中で振り返り、スウェットのポケットからサンタクロースのマスコットがついた……鍵を取り出した。 「これ、もしかして……?」 「そう、うちの鍵」 「美沙子さんちの合鍵ってこと?」  聞き返すと、美沙子さんは恥ずかしそうに俯く。 「ちょっと早いけど、クリスマスプレゼント。合鍵持ってたら、今日みたいに外で待ってなくてもいいでしょう?」 「いいの? 俺、勝手に入って美沙子さんの事待ってるかもよ?」 「うん、いいの。だって……」  美沙子さんは、一度大きく深呼吸をした。 「瀬戸くん、私の……か、彼氏だもん」  その言い方やもじもじと恥ずかしがる仕草が愛おしくて……衝動に任せて、腰と背中に手を回し、そのまま口づけた。 「んん……!」  美沙子さんは最初驚いていたが、すぐにふっと力を抜いて口づけを受け入れた。唇の柔らかさを堪能してから、ゆっくりと話していく。 「あのさ、美沙子さん」 「な、何瀬戸くん?」 「その、『瀬戸くん』って言うのやめてよ」 「え……? で、でも瀬戸くんは瀬戸くんだし……」 「さっき、『和樹くん』呼んでたじゃん。それで呼んで?」 「で、でも……」 「おねがい。プレゼントだと思って、さ」  俺の腕の中でもじもじとしている美沙子さんは、少し経ってから小さく『和樹くん』と呟いた。そのイチゴみたいに赤くなった頬に触れ、上を向かせる。美沙子さんの目が、潤んでキラキラと光っている。その瞳の中に、嬉しそうに笑う俺がいた。  そのまま、今彼女に呼ばれた名前ごと、唇を塞ぐ。ケーキも何も食べていないのに、美沙子さんは甘かった。
スキ!
スキ!
スキ!
スキ!
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

戦時下の恋は、絶望で終焉を迎えたはずだった。
1
完結済/7話/9,631文字/34
2017年12月12日
天敵だったはずの課長と私。誰もいないオフィスでの、ささやかな休息の時間――
2
8
1
10
完結済/8話/5,670文字/152
2017年12月23日
あたたかな部屋で待つ、愛しい人。
4
3
3
5
完結済/3話/4,387文字/78
2018年1月8日
憧れの先生のモデルをすることになった楓。二人きりの部屋で先生の視線が身体を疼かせる。
3
1
3
1
完結済/1話/6,115文字/79
2018年1月13日
みかんをもらって恋に落ちるとかない。絶対にない
1
2
完結済/2話/1,893文字/111
2018年1月14日
久しぶりに会ったハトコとこたつでみかんを食べているとだんだん雰囲気があやしくなっていき……
2
11
9
10
8
完結済/3話/5,890文字/243
2018年1月14日