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第1話

「もう、瀬戸(せと)くんってば……。来るなら来るって、ちゃんと連絡くれなきゃ」 「だって、バイト早く終わったし。それに、美沙子(みさこ)さんに会いたかったしさ」  俺の素直な言葉に未だ慣れない美沙子さんは、唇を不満げにへの字に曲げながらも……頬をピンク色に染めた。表現したい感情と、本音が入り混じっている。そんな表情も可愛いなと思いながら、俺はマフラーを外した。美沙子さんもささっとコートやマフラーを脱ぎ捨て、ストーブをつけていた。 「寒くない? 大丈夫?」 「大丈夫だって、ガキじゃねえんだから……」  ガキじゃない、という言葉はもはや口癖になっていた。美沙子さんは、俺・瀬戸和樹(せとかずき)よりも5つ年上の24歳。19歳の俺から見ると、立派な大人だった。出会いは2年前にさかのぼる……俺が高校2年の春、新任の教員として俺の通う学校にやって来た。絹みたいな艶やかな黒髪、落ち着いた印象を強めるツルの細い眼鏡……キリッとした姿なのに、恥ずかしげにはにかむその表情に、俺が一目で落ちた。その日から、クラスメイトや他の先生にばれない様に接点を増やし、口説いて口説いて……そんなことを繰り返していたら、卒業式の日、ついに美沙子さんは根負けした。俺の渾身の告白に頷き、それからは俺と美沙子さんは『カレカノ』という関係である。  しかし、その言葉に似あうような、そう、恋人らしい事は全くできていない。デート中に手を繋ごうとしても振り払われる。キスはほんの数える程度……それ以上なんてもっての外。発展していないのに、停滞期が来ているのだ。俺と美沙子さんの間では。 「バイトって、今日、大学は? ちゃんと行ってる」  美沙子さんはホットコーヒーが入ったマグカップ二つ、テーブルの上に置いた。このマグカップも俺が無理やり押し付けたものだ、ピンク色のが美沙子さん、青いのが俺の。それを受け取って、一口飲んだ。体の芯まで温かくなっていくのが分かった。 「もちろん、今日講義午前中だけだったから。それで、今日はお土産があります」  そばに置いていた紙袋の中から、中くらいの箱を取り出し、美沙子さんに渡した。 「開けてみて」 「え?」 「いいから」  美沙子さんは側面に付いていたテープを丁寧に剥がし、蓋を開けた。中には、小さなサンタクロースが乗ったショートケーキ二つが入っている。 「……これ、クリスマスケーキ?」 「そう、バイト先の試作品、余ったから持って帰っていいって。俺、サンタ乗せたんだ」 「へえ……かわいいね」 「美沙子さん、ショートケーキ好きでしょ? クリスマス当日も忙しいって言ってたし、先にケーキだけでも食べたいなって」  美沙子さんはクリスマスも年末も、大学入試に向けた高校の対策講座を持つため中々時間が割けない……去年は美沙子さん目当てでソレに通い毎日のように顔を見ていたのに、その楽しみすらなくなり、その上美沙子さんに会えないと来たもんだ。だからこそ、少しでも時間が出来たら会いたいと思うのは……普通の事だと思う。 「いいの?」 「うん」 「ありがとう。今、お皿もってくるね」  美沙子さんは白い皿を取り出し、その上にそれぞれケーキを置いた。赤いイチゴが、生クリームと皿の白に映える。 「いただきます」  フォークを持ち、小さく切り分ける。口に入れて、喉が動くまでの一挙一動を目をそらさず見つめる。 「……おいしい」  美沙子さんが、小さくはにかんだ。その表情が好きな俺は、心の中で大きくガッツポーズをする。彼女の喜ぶ顔を見るたびに、胸が暖かかくなる。その間、美沙子さんはケーキを食べ続ける。その満足げに動く唇の端に、生クリームがついた。 「美沙子さん、クリーム付いてるよ」  手を伸ばし、指先でクリームを拭う。その時、そのイチゴみたいに瑞々しくて綺麗な赤色をしている唇に……少しだけ指が触れた。その途端に、美沙子さんはまた耳まで赤くなる。 「美沙子さん?」  その表情を覗き込むと、美沙子さんはさっと目線を反らした。 「ご、ごめんね、びっくりしちゃって」  メガネの奥、伏せられた潤んだ瞳、長いまつ毛には小さな涙の粒が付いた。頬を上気させ俯くその仕草が、どうしても……俺の劣情を刺激した。 「美沙子さん」 「え? あ、きゃっ……」  持っていたフォークを放り投げ、美沙子さんの肩を強く押すし、そのまま美沙子さんを床に押し倒した。目を丸くさせた美沙子さんが、じっと俺を見つめる。 「な、何?」 「ごめん、もう無理」  美沙子さんの耳の横に手をつき、唇を美沙子さんのソレに押し付けた。驚いて息を飲む音が、すぐ近くで聞こえる。  啄む様な口づけを何度も繰り返し、美沙子さんの唇が抗議するために薄く開いたその瞬間に俺の舌を滑り込ませる。舌先が美沙子さんのソレに触れると、生クリームのわずかな甘みを感じた。  狭い咥内で逃げ惑う美沙子さんの舌に、俺自身を絡ませる。ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、首を傾けさらに深く繋がっていく。舌の裏側をなぞると、俺の下にある美沙子さんの体が震え……上あごをくすぐるとくぐもった甘い声が漏れ始める。その戸惑った美沙子さんの反応が堪らなくなって、カットソーの裾から手を差し込み……背筋をツウーッとなぞる。その時、美沙子さんが強く俺の肩を押した。 「だ、だめぇ……!」 「だめじゃない」  俺は空いた手で美沙子さんの両手首をつかみ、頭の上で強く床に押し付ける。美沙子さんはどれだけ身じろいでも、男の手を振り払うことは出来なかった。背中を伝っていたもう片方の手は、下着の金具に触れていて、少し指先に力を入れるだけで簡単に外れた。窮屈な物に覆われていた美沙子さんの胸から、ふっと力が抜ける。脇に向かって手をずらすだけで、柔らかな胸に触れる。 「いや、やだ……瀬戸くん、待ってってば」  美沙子さんの「お願い」も無視して、俺は夢中になって……片手で胸を揉みしだく。それはふわふわと柔らかいのに、ちょっと強く触れると弾むように跳ね返ってくる。美沙子さんは俺の真下で身を捩らせるが、少しずつ息が上がってきた。  夢中になって触れていると、指先にぷっくりと尖った胸の頂が触れた。そこをピンッと弾くと、美沙子さんは耐え切れなくなったのか甘ったるい嬌声を響かせながらびくびくと震えだす。 「や、あぁあん……っ!」 「これ、気持よかった?」 「ち、違くてぇ……」  人差し指と親指でそれを軽く摘まむと、美沙子さんはまた喘ぎ声を漏らす。
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