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chapter2 + 26 +

   * * *     「医療チームの外部派遣?」 「茜里(せんり)第二病院に当院の麻酔科医陸奥、整形外科医加藤木のふたりを派遣する」  それは上からの突然の辞令だった。  理事長室に呼び出された陸奥と加藤木は互いに顔を見合わせ、どういうことだと首を傾げる。  地域医療センターの理事長、白井はふたりの反応を気にすることなく話をつづける。   「入院中の亜桜小手毬の治療についてだが、精神科領域の専門家が少ない当院では限界がある」 「……転院、ですか」  ダークオークの書棚に囲まれた理事長室で、机の向かいで悠々と座る白髪の老人を前に陸奥は渋々口を開く。  小手毬の病態変化とともに転院の可能性については考えていた。けれど、陸奥は彼女をほかの医師に任せる未来が想像できないまま、今日まで来てしまった。  白井は陸奥の無表情を一瞥し、そうだ、と応える。   「先方も快く患者を受け入れてくれるという。ただ、当院から彼女の治療に関わっている医師を派遣するよう要請が来た」 「それで、わたしと陸奥先生なのですね」  ふむふむ、と興味深そうに頷く加藤木を訝しげに見つめる陸奥。  面白いことになりましたねぇ、と好奇心旺盛な双眸が陸奥を射る。  それでも陸奥の表情は変わらない。   「亜桜氏からの了承も得ている。君たちふたりの当院での業務だが、しばらくは茜里の医師が引き継ぐ形になる。陸奥には引き続き亜桜小手毬の専属主治医としてペインクリニックを中心とした治療に専念してもらう」 「では、わたしは? リハビリテーションだけなら茜里にもスタッフがいらっしゃると思うのですが」 「こう言ってはなんだが陸奥の監視役だ。万が一のことがないよう患者と親しい女医も一名欲しいと言われてね……君たちは同期だし、うまくやっていくだろうと判断したわけだ」 「そうですかー」  加藤木は納得のいかない表情を浮かべているが、それは陸奥とて同じである。  ――万が一のこと、って何だ? 万が一って? 俺が患者に手を出すとでも?  不本意ながら既に小手毬にキスしてしまった手前、反論もできないまま陸奥は心のなかでもじもじと葛藤している。  そんな陸奥の様子に気づかぬまま、加藤木は頷く。 「かしこまりました。それで、転院はいつごろ……?」 「明日だ」 「え」  きっぱりと告げる白井に、陸奥と加藤木はふたたび顔を見合わせる。
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