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chapter2 + 16 +

   * * *  面会時間内にやってきた招かれざる客がもたらした騒動のせいで、陸奥の機嫌は急降下した。  それでなくてもここ数日は緊張を要する手術がつづいており、ようやくひと段落ついたところだった。  そこへもたらされた小手毬の容態の急変だ。陸奥はしゅんとした状態の自由と点滴に繋がれた小手毬を見て一喝する。   「お前がいながらなんてザマだ!」 「……申し訳ありません」 「もういい。自分の持ち場に戻れ」 「はい。失礼します……じゃあな、小手毬」  幸い、すぐに意識を取り戻した小手毬は何事もなかったかのように微笑んで蘭子を見送ったが、先ほどまで子どもにしか見えなかった彼女が一気に老け込んだような豹変ぶりに蘭子の方が驚き逃げるように去ってしまった。  彼女と入れ替わりに病室に入ってきた陸奥は、状況がわからないものの、自由を追い払ってから棚や床に散らばる真っ赤なバラの花弁を拾いはじめる。  小手毬は横になった状態で自由に向けて手を振っている。彼の足音が消えたのを確認して、小手毬は陸奥に弁解をはじめる。     「あのね……ジュウおにいちゃんは悪くない、の」  すこし不貞腐れたような表情で小手毬は唇を尖らせる。子どもっぽい仕草なのに、どこか色っぽく見えてしまい、陸奥はぶん、と首を振る。   「お前には聞いてない」 「……」  陸奥はおとなしく引き下がる小手毬を見て、違和感を感じる。  ふだんなら、もっと自由のことを怒るなと騒ぐだろうに…… 「ミチノク」 「なんだ」 「お金のない死にぞこないのあたしにできることって、何だかわかる?」 「なっ……」  彼女の哀しそうな問いかけに、陸奥は絶句する。  小手毬は蘭子とのやり取りで、曖昧だった記憶を取り戻したのだろうか。  黙り込む陸奥を見て、小手毬は老女のような悟りきった表情で呟く。 「雪之丞のおじさまが亡くなった……あたし、行かなくちゃいけないの」  どこへ、という問いかけるような陸奥のまなざしを受けて、小手毬はつづける。 「彼の血を受け継ぐただひとりの器となるために」
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