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第5話

「そしてようやく探り当てたというわけだ。地方新聞の小さな事故の記事をね。まさか探し続けた叔母と従妹の手掛かりが、死亡記事だとは想像だに、――――――――――していなかったけどな……っ」  碧志(きよし)が凛々しい眉を寄せて、苦々しい表情で吐き捨てるように言った。その態度からは、じくじたる思いがひしひしと伝わってくる。 「僕らは瑠璃子さんご本人のことは幼すぎてあまり記憶にはないが、写真をとても良く見ていた。本当に……良く似ている……」 「ああ……、まるで写真の中の瑠璃子さんがそこにいるようだ……」  翠良(あきら)碧志(きよし)真珠子(しずこ)に少し潤んだ視線をそそぐ。 「ほら、見てごらん。浅葱伯爵家に一葉だけ残されていた、瑠璃子さんの娘時代の写真だ……。碧志(きよし)、見せておあげ」  翠良(あきら)が小さな声で碧志(きよし)に命ずると、真珠子(しずこ)のすぐそばにまで碧志(きよし)がツカツカと歩み寄り、大きな背をかがめて、まるでおろしたてのように皺一つない絹のスーツの胸元の内ポケットから黒革の写真入を取り出した。 「まだ瑠璃子さんが華族女学院に通っていたころの写真だ。……今のお前と同じか、少し年上くらいだな」  まるで肩を抱かれているかのごとく近くで、碧志(きよし)が彫像のように美しい顔を寄せて二つに折った古い写真を開いて真珠子(しずこ)に見せた。  一瞬、むせ返るほどに濃厚な重く甘いオーデコロンの香りに、眩暈に似た陶酔を覚えて、真珠子(しずこ)は数回瞬きをしてから写真に視線を落とした。 「……おかあ……さ……ん……」  一目でその写真に写る豪奢な振袖姿で西洋風の椅子にもたれた優美な姿勢の乙女が、昨日事故死したばかりの母・瑠璃子だと判った。顔立ちもさることながら、その瞳。  十数年の時を経てなお、写真を見る者の心の奥まで刺しこむように鋭く、真っすぐな、凛としたまなざし。それは生前の母、瑠璃子そのものだった。  そして、なによりも……。古い白黒の写真なので色や細かい装飾まではわからないが、真珠子(しずこ)は母が着ているこの振袖の柄を知っていた……。  臓腑の奥底から焼けるように熱い感情が、かぁぁ……っと駆け上ってくるのを感じながら胸に抱いた母の遺骨とともに、首から下げた母手作りの御守りを泣きそうになるのを我慢しながら、強く、強く、胸に圧し抱いた。 「生き写し、とはこのことだね……。この振袖は僕らの父である先代浅葱伯爵が、最愛の妹である瑠璃子さんの十五の誕生日に贈ったものなのだよ」  翠良(あきら)の柔らかな指先が、そっと真珠子(しずこ)の頬に触れて、いつの間にかこぼれていた涙の筋をぬぐった。 「この……着物……。お母さんの着ているこの着物……。私、知っています……」
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