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第5話

・・・・・  ――それが、昨夜のこと。  周くんは息をするように、さらりと続ける。 「社長こと父さんは、色情魔かってくらい女の人囲ってて」 「う……は?」    打ちかけたあいづちが止まる。 「僕以外に息子がふたり。娘もふたり。全部母親違いの」 「それは……」    すごいね、と言っていいのかわからない。 「でも本妻の息子は僕だけで」 「……うん」 「その父さんが先月倒れた。これオフレコ」 「え?」    周くんのお父さんが倒れた。  ってことは、我が社の社長が倒れた。  え、なにそれ大丈夫なの?  私の顔を見て、周くんは形容しがたい表情を浮かべる。 「大丈夫だよ。命には別条ないしね」 「そ、そう……」 「んでその父さんが『周に任せる』とかいきなり言い出したもんだから、今まわりがけっこううるさい状態」 「そ、れは……」    うるさくもなるでしょ。  事実上今すぐにでも継いでくれって言われてるようなものだよね? 「で、昨夜の叔父さんは反対派筆頭」  バーで会った失礼で下品な中年男。  あれが周くんの叔父さんと知って、なんて言っていいかわからない。  だって…… 「……なかなか…いい性格の叔父さんだね……」 「ハッ」  周くんの可愛らしい顔が歪む。  それなのにどこか楽しそうで、彼のこんな顔は初めて見た。 「ねえ。それ、すっごい嫌味なのわかってる?琴乃さん」 「……でもあの時の周くんもなかなかのものだったよ」 「そ?」 「うん」   どんな言い方されても、笑顔も丁寧な言葉使いもやめなかった。  お前なんか相手にすることさえ無駄だ、っていう冷徹な微笑みにも見えた。  ……まぁそれが尚更あの聡彦って人には面白くなかったみたいだけど。 「だってさ。アイツ琴乃さんのことやらしー目でみたし」 「え?」    なにそれ。そこ?  周くんは掛け布団のすき間からスルッと手を差し入れてきた。  気付いた時にはもう遅い。  とっくに下着姿にされていたから、簡単に素肌に触れてくる。 「ちょ、ちょっと……」 「覚えてるでしょ?なかなかの女だ、って言われたの」    言いながら周くんは背中に手を回してホックを外す。  掛け布団はまだ剥がされない。  あくまで私は布団に包まれたまま、布越しに周くんに抱きすくめられたまま、布団の中だけで彼の手や指は好き勝手に動き回る。  この器用さが憎らしい。  だってなんか、慣れてるって感じがするし……そうすると自然と恋愛経験豊富なんだろうなとか考えちゃう自分がイヤ。 「琴乃さん、聞いてる?」 「……っあ!」    ブラを外されて露わになった胸の先をキュッとつままれた。  思わず声をあげると、クスッと耳元で笑われる。 「お仕置き」 「ちょっ……」    ようやく布団を剥がされたと思ったら、左手が背中に力強く回った。右手は腰をさすり、そのままお尻へと降りて下着の中へと入ってくる。 「このラインいいよね……オレ、すごい好き」  ……オレ、って言った。  僕からオレに。   甘い変化に頭の芯が痺れていく中、周くんは右手で私のお尻の丸みを撫でる。そして唇は耳たぶへ、左手は胸に伸びてきた。 「周く、……っ、あっ……」  話が途中なのにと思うのに、与えられる気持ち良さから逃れられそうにない。  耳たぶから睫毛へと唇が移る。  ちゅ、ちゅ、と小さく音を立てるキスを重ねてはペロリと舐められ、その度に私の唇からは荒くなっていく息しか出てこない。 「……な、んでそんなとこ……」 「えー?消毒だよ、消・毒。アイツに見られたとこ」    少し軽い調子で言った周くんは、もう一度耳元に唇を寄せると今度は耳の中にまで舌を差し入れてきた。 「……っ!」 「アイツの声も聞いたでしょ?」    水音と温かな感触が消える。  同時にふう、と息を吹きかけられ、ぞくりと身体が震えた。
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