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第4話

   社内恋愛なんてそれほどいいものでもない。  浮かれてる最中はまだマシだけど、別れたなんてことになれば自分たちが気まずいだけじゃなくて周囲にも気を使わせるだけになる。    だから出来るだけ会社の人間が選びそうにないお店を冒険するのも、私たちのひそかな楽しみのひとつだった。  私たちの関係は、出来るかぎりナイショ。  でも私たちの間でのナイショは、今のところまだなかった。  はずだった。    別にね、付き合ったからって全部見せてって思うタイプでもない。  中高生で初めての彼氏とかならまだしも、いい年して「隠し事はナシだからね」とか言いたくない。  逆にそんなこと言われたらめんどくさいし。  しかもまだ付き合って半年。  これから知っていくことだってたくさんある、まさにこれからな時っていうか。   「えーっと……隠してたわけじゃないんだけど……」    だから、困ったような表情はそのまま、どこか気まずそうに頬を掻いた彼の困惑はわからないでもない。完全に想定外だったんだろう。 「……てことは、ホントなの?」    カウンターに置かれた彼の手の上に、私は手を重ねる。  責めるつもりは少しもない。ナイショにされてたことを怒るつもりもない。というか、そんな気にもなれない。 「……うん」    沈黙のあと落ちた彼の声に、私は文字通り目を丸くした。  怒るつもりもないし、そんな気にもなれない。    だって、普通思わないでしょ。    心の中でアイドルと呼んでた新入社員の男の子。  同じ部署で過ごしてから2年が経ち、好きですと告げてきた時の恥ずかしそうな顔。  ほだされたっていうと表現がよくないかもしれないけど、ぶっちゃけそうだった。    一緒に過ごす時間が増えてから、可愛くて格好いいところも色っぽい所もたくさん知った、3つ年下の私の恋人が。 「ウチの社長の息子で……次期社長なの?」
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