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第2話

「……?」    話したくなくて拒否されるのかと思ったら、掛布団を私にかけてくれる。 「……あの、周くん……?」 「あーーーーもーーーー」    そしてその上から思いきり抱きしめられた。  抱きしめられたってより、足ではカニばさみされてるし、掛布団でぐるぐる巻きにされて確保されてる気分。 「周くん、くるしい……」 「今は正直流されてほしかったーーー」 「あ……ごめん?」 「ムスコがとても辛い」 「ごめんってば」 「ってのもあるけど」 「?」 「琴乃さんへこんでたし、いっぱい可愛がってあげたかった」 「……あ」    やっぱりバレてる。  今日、ちょっと仕事でへこんだの、まわりにはバレなくても周くんにはバレてた。  しかもなんかサラッと恥ずかしいこと言われた。 「でも流したらごまかしたって思われて嫌われたり、信用失うのも嫌だし」 「……周くん」 「付き合いたてほやほやレベルのときに、これはねーよなあ……」  周くんはぼそっとつぶやいた。   私の肩から上は掛布団から出ていて、周くんの首元に埋まってる。案外がっしりと太めの首筋が大好きで、思わずキスしたくなったけど今は我慢だ。  昨日の夜の、話の続きをしたい。  衝撃がすごくて、本当のことだよってだけしか耳に入ってこなかったから。そのままお開きになっちゃって、今に至っている。  だから改めて、周くんの口から聞きたかった。 「琴乃(ことの)さんが訊きたいのって、僕の立場のことでしょ?」 「うん」  周くんは右手で私の髪に触れた。  手のひらから落ちていく髪を見ながら、ハァとため息を吐く。 「昨夜会ったのは……僕の叔父だよ」 「えっ?」  昨夜のバーでの出来事を、私は思い出した。 ・・・・・  ふたりで横に並んだバーカウンター。    カランという静かな鐘の音は、新たな客人が迎えられた証拠だ。  わざわざ確かめる無粋な真似をする人間は、あの空間には誰ひとりいなかった。  控えめな照明と暗い空間。  見えるのは連れだった互いの顔のみ。  まわりのカップルと同じように、私たちもそれを楽しんでいた。 「……周、か?」    ―――その声がかけられるまでは。  周くんは一瞬肩をびくつかせると、ゆっくりとそちらへ向いた。  ふり向く時に周くんから『四ノ宮くん』に変わっていくのがわかったから、会社関係の知人にでも見つかったのかもと思ってた。  私たちの関係は社内では出来るかぎりナイショにしてる。でもべつに、ひた隠しにしてるわけでもない。ただ、自分たちからは言いたくないだけで。  どちらかの知り合いに会ってしまった時、挨拶をしない方が心証が悪いことくらいはわかってる。  だから、私も一緒に振り向いた。
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