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第13話

「あ、周くん……?」 「気付いてないなら僕にとっては好都合ですけど」 「なに……?」 「そもそも知ってて煽ったのは僕ですしね。……気の毒な人だな、あの人も」 「周くん、話が見えない」  答えないまま目を細めた周くんはスカートに手を伸ばす。  閉じようとしていたはずの脚は欲望のまま勝手に開いて、それを周くんが見逃すはずもない。 「あーあ。あっさり開いてくれちゃって」 「ん……っ!」 「しかもすっごい敏感」 「だれ、の……せいだと」 「もしかしてちょっとでも期待しちゃいました?」 「んぁあっ」  下着越しで敏感になった突起を撫であげられ声が出た。  あわてて口元を抑えた私の手を掴んだ周くんは、かわりにキスをくれる。 「んっ……」  周くんを迎えようと自然と開いてしまった唇を、ぺろりと舐められた。  深いキスじゃない。咥内に入ることなく私の唇をぺろっと軽く舐めて、自分の唇も同じように舐める。一連の動きがなめらかで艶っぽくて、もう1度キスしたい激情が頭の芯を痺れさせた。 (……どうかしてる、私)  いくら焦らされたからとはいっても、こんなに欲しくなるなんて。  会社では素知らぬふりしてただの後輩を演じているのが四ノ宮周のはずなのに、それが急に崩れたこと。  恋人の時間でも見たことのなかった強引な態度。  なのに崩さない丁寧語。  全部が私をおかしくさせた。 「そんな顔しても駄目ですよ。言ったでしょ」  聞いた。さっき聞いた。  でも、と言いかけて壁の時計が目に入る。 (……戻らなきゃ)  さすがに怪しまれてしまう。  ジンジンしてろくに働かなくなりかけた頭でも、そのくらいわかる。  綺麗に直してくれたシャツの胸元をおさえて、ゆっくりと机から降りた。  周くんはそっと背中に手を添えてくれるけど、今の私にはそれさえも拷問みたいだ。 「……戻、る……から」 「ハイ。僕もコピーかけたら戻りますよ」  「……っ」  できるだけ周くんの顔を見ないよう資料を手に走り、私はドアへ向かう。  だって、ダメだ。  これ以上ここにいたら、おかしなこと言い出す気がする。  会社なのに、仕事があるのに――そういうものを全部取っ払ってしまう理由を、今の周くんは持ってる。 「待って、大朏さん」  全部の劣情を振りきって出て行こうとドアノブにかけた瞬間、手首をつかまれた。 「こっち見てください」 「……嫌」 「じゃあ向かせます」  言うが早いか顎をつかまれ、無理矢理周くんへと向かせられた。  目が合う。  周くんの目が、ふ、と細くなった。唇もつりあがって、満足そうに微笑む。 「……モノ欲しそうな顔して」 「し、してな」  「目がうるんでる。頬も紅潮してるし、息遣いも荒い」 「……!」 「……すっごい、やらしい。こんなの、会社にいる大朏先輩じゃないですよね……?」 「あま」 「四ノ宮です。大朏先輩」 「んっ!」  チュ、と音を立てて耳にキスをしてきた周くんは、そのまま舌先でなぞりながら笑う。 「……ついでに言うと、やらしい匂いもするんで」 「…っ!」 「気を付けてくださいね。発情してるの、皆さんにバレないように」 「はつ……っ!」 「特にあの人……」  話しながら耳を舐めるから、水音と声が混じって聞き取りにくい――― 「……佐野さんには、ね」
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