55 / 55

第55話

・・・  周くんについて知っていること。  仕事が出来ること。嫌味なく上司を立てられること。  一部の女子にものすごく人気があること。そして、それを知っているのに知らないふりをしていること。  飲みの誘いを断るのがとても上手いこと。  いつも笑顔でいるのに、時々目が笑っていないこと。  ソファに並んで座っているときに私の右の首すじに顔や頭をすりつけてきたら、甘えたいっていうこと。  キスする時……唇をうすく開く前に自分の唇を少し舐めること。  それと―― 「んっ……!ぁ、んぅっ……、も、むり……っ」 「まだまだ……っ、は……、っ俺が欲しいって、言ったでしょう……っ」  ――セックスが、上手いこと。 「あっ……あ、あっ……ほんとに……っも、う、むり、だから……っは……」  助けを求めるように天井へと伸ばした手は周くんに絡めとられて、またベッドに縫い付けられた。  周くんの端正な顔は時折快感に歪み、満足そうに笑みを浮かべた口元からは意地悪な言葉と艶めかしい吐息が途切れることなく吐き出されている。  私はただ翻弄されるだけで、まるで水の中にいるみたいに呼吸がしにくい。息の仕方を忘れてしまったみたいに苦しくて、声が枯れてきているのもわかっていた。 (だめ……何も考えられない……)  もうどのくらいこうしているんだろう。  思いの外仕事が伸びてしまった私が、周くんのマンションを訪れて、玄関が開いたらそのまま寝室に連れ込まれて―― (ちゃんと話し合いしたかった、だけなのに) 「あ、まねく……っ、あっ、ああっ……ん、ん……んん……!」 「……またイっちゃったんですか……?今日の琴乃スゴイね、どうしたの?」 「っ……は、っ……はあ………」 「はい、ぎゅーしましょうねー」  何度目かの絶頂を迎えて肩で息をする私を、周くんは満足げに抱きしめた。  周くんの胸に頬を寄せるのは、最初から好きだった。  付き合っている事を内緒にしている会社では出来ない触れ合いの中で、いちばん好きだった。キスもセックスも好きだけど、それよりもずっとあったかくて、好きだって全身で伝えてくれる気がして、大好きだった。 (……今だって……好き……だけど)  周くんは少し身体を離すと額にはりついた私の前髪をかきあげ、顔をのぞきこむ。  瞬間、それまで熱っぽかった目がすっと冷めていくのがわかった。 「……琴乃」 「…………」 「その涙は……さっきまでの、気持ちよすぎてのやつとは違うよね」 「………」 「俺とするの、もうイヤ?」 「そんなわけない!……けど」 「けど?」 「どうしてこうなっちゃったのかなって……」 「こうなったって?」 「私はもっとちゃんと話したいんだって」 「だからちゃんと話してるでしょ?身体の会話みたいな」 「何言っ……あっ、んっ……?」  私の濡れたソコに、周くんが自身を擦りつけてくる。  ゆっくりと腰を動かしながら私の頬を手でやさしく撫でて、あやすようにキスをくり返した。
スキ!
スキ!
スキ!
スキ!
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

魔女を倒して十数年、ヘンゼルとグレーテルはそれはそれは美しい兄妹に成長しました。
5
1
6
完結済/8話/9,983文字/57
2017年11月11日
――アレハンドロ卿は、女王の忠実な下僕。
1
1
2
1
完結済/1話/6,940文字/32
2017年9月20日
キミにすることは全部、ボクに返ってくるのを見越して。
1
完結済/7話/6,306文字/0
2018年1月14日
きっかけはよく似た指輪と、罪の匂い。
連載中/5話/4,279文字/0
2018年1月14日
主人公はキャバ嬢。祖父から遺産相続したカフェの営業再開に向け孤軍奮闘する物語
連載中/5話/6,023文字/0
2018年7月15日
甥のための結婚に応じた未亡人が片親違いの弟と4つ下の義甥に言い寄られる話。
連載中/6話/49,633文字
4月5日