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第54話

「しょ、証明って……」  戸惑う私を楽しそうに見遣った周くんは、反対側のソファまで歩いていくと優雅に腰を下ろした。  長い脚を組んで、私の髪から足の先までじっと見つめている。まるで服の下までも見透かすように、熱い目で。 「ほら。早く」 「って言われても……どうしたら」 「オレにわかりやすく示してくれたらいいんですよ」 「……好き、って言葉じゃ」 「足りません」  周くんはきっぱりと言い放つと、組んでいた脚を解いて大きく開いた。 「こうやって脚、開いて」 「なっ!」 「全部履いてるんだからいいでしょ?……あ、琴乃はヒール脱いで、ソファの上に足置いて」 「できるわけな」 「本当は脱いでそのカッコしてほしいところを譲ってるんだけどなあ」 「……っ」 「早く戻りたいんですよね?」 「………うん」 「ならオレに脚開いてみせて。社内で絶対しないこと、琴乃からしてよ」  穏やかだけど、強制力を感じる周くんの声。  ベッドでの時しか聞けないこの甘くて逆らえない声が、社長室に響いている。ほかのみんなが仕事をしているというのに、この年下の恋人は、愛を示せと開脚をねだっている。 (……やだ)  今まで見せなかった周くんの姿に、声に、独占欲に、自分の顔に熱が集中していくのがわかった。  熱くなっているのは顔だけじゃない。下着の奥が疼いている。どうなっているのかなんて、わかりすぎるほどわかってる。 「うん、そう」  ヒールを脱いだことに気付いた周くんはやわらかく笑う。  私はヒールを揃え、おそるおそる足をあげた。ゆっくりと――周くんを見れないまま、顔を背けたまま脚を開いていく。  脱いでないのに私が今どんな状態なのか全部見透かされそうで、こわくて見れない。 「……服着てるのに、やらしいね。琴乃」 「……っ、ひ、ひらいたから……っもう、いい」 「ダメですよ。オレを見て」  顔から火が出そうって表現が今、すごく身に染みてわかる。  恥ずかしくて熱くて、それ以上に―― 「……オレが欲しい?」  目が合った瞬間、周くんが笑った。  年下の男の子の顔じゃなくて、欲情した恋人の目をして笑った。そんなことない、って言いたいのに声が出ない。 (だって)  見てしまったらダメだった。  周くんがベッドの中と同じ目をして私を見るから、そんなところにいないで早くさわって、早く抱いてよって、そういう想いが胸の奥からあふれそうになったから。 「でも仕事に戻らなきゃいけない。葛藤してるね」 「……っ」 「もうグショグショだろうなぁ。琴乃の、ソコ」 「……!も、もう、閉じ」 「ダーメ。……ほら、オレに言うことあるでしょう?」 「……っ……」 「今ここで抱けないなら、オレはどうしたらいい。琴乃はどうしてほしい?」 「……っあ」 「なんでもうそんなエロい声出してるんですか」 (こんなはずじゃ……なんで) 「琴乃」 「……今日の、夜」 「うん」  周くんが頷く。続けてください、と目だけで促す。 「……会いたい……」 「会うだけでいい?」 「や……」 「どうしてほしいの」 「…………周くんが、欲しい」  ちいさくちいさく吐き出した声に、周くんが低く笑った。
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