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第46話

・・・・  オフで周くんと会わなくなって、5日が過ぎた。  繁忙期で会えないとか前みたいに周くんの研修がとか私の仕事が詰まってるとか、そんなんじゃない。会えないんじゃなくて、会わなくなっていた。  メールや電話は今まで通りにしてる。意識して、そうしてる。  でも忙しいとか持ち帰りの仕事がとか何だかんだ理由を付けて、仕事終わりでも週末でも会うのを避けてしまっていた。 (……だって) (会わせる顔がない)  真新しいパソコンの液晶画面を前に、ため息しか出ない。  改めて佐野にキスされたことや抵抗しなかったこともだけど、それ以上に言われたことが刺さっていた。佐野には悪いけど、告白のことじゃない。  それにも動揺はしたけど、胸の奥でくすぶり続けていたことを言葉にされたことが刺さってる。 『そもそも、社長の息子であることを隠されていたんだろう?』 (違う。話そうと思ってたって周くんは言ってた) 『お前が虚しくないならいい』 (虚しくなんてない) 『お前が快楽で誤魔化しているようにしか見えんが』 『誤魔化しているのはお前自身か?それとも四ノ宮か』 (違う……違う!)  頭の中でくり返される佐野の声に首を振った。  エンターキーを押す力が自然と強くなる。隣の天崎がおどろいたように私を見たのがわかったけど、適当な笑顔で誤魔化した。 『快楽で誤魔化す?おおいにけっこうなことだと思いませんか』 (……っ!)  そこに周くんの声がかぶさり、一瞬くらりとする。 「大朏さん!」 「えっ……」  天崎の声に我に返ると、今の今まで作成していたグラフが消えていた。 「……あ」 「どうしたんですか大朏さん、消えちゃいましたよ」 「あ…うん、大丈夫、これくらいならすぐ復元できるし。……よし」 「ほんとだ。……でも最近おかしいですよ」 「おかしい?」 「お仕事はちゃんとされてますけど…よくぼーっとしてるし。なんか、大朏さんらしくないっていうか……お疲れじゃないかと」 「私らしく…」 「ちょっと息抜きしてくださいよ、今そこまで詰めてないですよね」 「……そうだね。ありがと。ちょっと抜ける」 「はい、いってらっしゃい」  ひとまずデータを保存して立ち上がる。  後輩に心配かけるなんて情けない。ほんとに、情けない。  それでも課内をひと通り見回し、郵便局などへのお使いがないか声をかけた。チラホラと手があがり、いくつかの封筒を抱えて課を後にする。 (……いい天気)  1歩外に出ると太陽がまぶしい。  いい天気の日に周くんと出かけたのって、いつが最後だったっけ。付き合いはじめに1回くらいあった気がするけど、ほとんど仕事のあとに飲みに出て、そのあとどっちかの部屋に行って……  周くんとは夜に会ってばっかりだ。 (ていうか……セックスしてばっか)  それを不満に思ったことなんてなかったのに、なんで今胸が痛むんだろう。  仕事をがんばって好きな人に求められて嬉しくないわけないし、大人だし、コミュニケーションのひとつだし、ベッドでだからこそ話せることだってあるし。 (なんで自分に言いわけみたいなことしてんだ) (……あ。そっか)  ベッドだからこそ話せることはたくさんあったのに、あの夜、偶然聡彦と会うまで周くんについていちばん大切な事を打ち明けられていなかった。 (大人ぶって公私分けるいい女ぶってたって、結局) (それがショック…だったのかなぁ)  しかも自分の気持ちの整理さえうまく出来ない。  全然、わりきれる大人なんかじゃない。  私らしくないというか、私の知らない私がいた。そんな感じだ。
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