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第38話

  「つまり、周……おまえは本気で社長(そこ)の椅子に腰かける気でいるのか」  今まで強気でしかいなかった聡彦の声が枯れかけているのがわかった。そんな聡彦を見て、周くんは答えず穏やかに微笑んでいる。 (普通に怖いんだけど) 「おっ……お前の望みどおりにはいかんからな!絶対に、いかんからな!」  ソファーが後ろに倒れそうなほどの勢いで聡彦は立ち上がり、顔を真っ赤にして部屋から出て行ってしまった。  周くんは、ふぅと息を吐き出すと背にもたれ、ああ、と小さく呟いて佐野を見る。 「佐野さんも戻って結構ですけど」 「……本気なのか」 「え?」 「四ノ宮は本気で社長を継ぐつもりなのかと聞いている」  佐野はその場から動かない。仁王立ちのまま、周くんを見おろしていた。  まだ(仮)であったとしても事実上社長である周くんに聞いてるんじゃない。イチ同僚として、もしかしたらイチ男として聞いてるのかもしれない。  周くんは組んでいた脚を下ろし、綺麗に揃える。 「……この会社は、体制も思想も古臭いですし。社長なんてものに興味がなかったのは本当です」 「だが」 「そうですね。今は案外面白く思っていますよ」 「面白い……?」 「ええ。体制も思想も変えてゆける力が僕にあるんだとしたら……社をよりよくする(おさ)になることに興味は出てきました」 「……わかった」  そう言って、佐野はドアへ向かい――私を見る。 「大朏。お前も戻るだろう」 「あっ……うん」 「申し訳ありませんが、大朏さんは残ってください」 「え、なに」 「少し雑用を頼みたいのです」 「四ノ宮。こいつはお前の秘書でも何でもない。仕事があるんだ」 「大丈夫です。大朏さんの山場がひと段落したことは存じ上げてますから。ほんの1時間もかかりません。それに、僕だってそちらに戻りたいです」 「……」 「すぐ戻るから佐野は戻ってて」 「……わかった」  周くんを睨みつけながらも、佐野は社長室から出て行った。  今度こそ周くんはハァーアと盛大にため息をもらし、そして背もたれではなく私の膝へと倒れ込んでくる。 (ひざまくら!) 「あっ、周く」 「四ノ宮ですよ、大朏先輩」 「四ノ宮くんはこんなことしないでしょ」 「あはは、そうでしたね」 「……この部屋の認証システムや端末の一斉買替え、本当に四ノ宮くんが?」 「そうですよ」 「そんなの、出来るの?」 「やって見せたでしょう」 「そうだけど……」  端末の確認だけではなく、業者との連絡や工事なんかはいったいどうやって取り付けたんだろう。  そういえば、秘書らしい秘書を見たことがない。というか、前社長の頃から見たことがない。大企業というほどでもないし、ドラマに出てくるようないかにもな秘書がいるとも思ったことはなかったけど、それでも必要じゃないんだろうか。 「社内では聡彦叔父がくっついてるし、社外でも佐野さんはじめ監視役もいる中、よくやったと思いますよ?自分でも」 「え!?」 「研修の名目で他社の見学や業者の選別に身を削って動いてたんですから」 「ええ!?」 「でも最高に面白かった。……朝の皆さんの顔、最高でした。彼らのあの表情で全部が報われた気がしますね」 「……周くん…」 「なので」  ひざまくらをしていた周くんが、上目遣いでにこりと笑う。 (かわいいけど、え、なに、なんか寒気が) 「ご褒美くれてもいいですよね?セーンパイ」 「えっ」  ――と思った瞬間、おしりの下に手を入れられてバランスを崩し、そのまま身体ごと仰向けに転がされた。 「待っ……!何して」 「押し倒しただけですよ」 「だけですよ、じゃなくて」 「もう黙って」 「ん……っ!?」  パンツの上から、すり、と指で下着のラインを撫でられた。  何度も何度も長い指で撫であげられているうちに膨れてきたらしい突起を見つけられ、ソコをしつこいくらいに弾くような触り方をしてくる。 「ん、……っぅ、……、……!」 「敏感」 「……ふ、ぅ、……!」 「ふふ。自分の手で口抑えるとか、可愛い事しますね?でも……そうですよね。万が一にも、ドアの外に佐野さんがいたら聞かれちゃいますもんね?先輩のヤラシイ声」 「……っ! ぁ……、ん、ん……っ」 「あれ?佐野さんの名前で感じたんですか?」  周くんの指は速さも強さも増していく。  私はただ、首を振ることしか出来ない。 (ちがう!) (って言いたいけど、今、口、開けられな……っ) 「やらしいし……妬けるな」  低く落とした周くんの声が聞こえたと思ったら、するりと下着の中まで手が入ってきた。
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