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第3話 アリ君は実はお腹まで真っ黒です。

もう無理だ。 なんで俺の仕事場の前で キスシーンなんて見せつけるんだ? ……いや、リズの事だ。 俺の会社のオフィスの前だった なんてこと、絶対、わかってない。 だとしたら。 わざとやったわけじゃなくて。 ……アレがアイツの日常なんだろう。 リズが、チャラい男からの 二度目のキスを 受け入れたところで、俺は二人に背を向ける。 もういい。わかった。 アイツの事なんて……。 ******************* そして季節は秋を過ぎて。 青々としていた木々の緑は陰り、 色合いを急速に無くしていく。 「……寒い……」 あんなにちやほやしてくれた男の子達も。 可愛いって褒めてくれた女の子達も。 気付いたら周りにはいなくなっていた。 ショートパンツの脚に、冷たい風が突き刺さる。 「お腹痛くなってきちゃった」 小さなTシャツは全然体を温めてくれない。 「みんな……どこに行っちゃったのかな」 ガサリ。 踏みしめた木の葉も、 既に枯れ葉色になっている。 夏を過ぎたあたりから、 アリ君は私と話してくれなくなっていた。 「嫌われちゃったのかな……」 それが寂しくて、夏がずっと続くみたいに、 何も気づかないふりして、 皆と遊びまわっていた。 でも、秋が深まるにつれて 仲間たちも、徐々に姿を消して。 『冬が来るよ』 『寒い冬が来るから準備をしないと』 ──誰も遊んでくれなくなって。 「もう……冬が来るんだ」 寒くて。寒くて。 悲しくて。 結局、気付くと 私はアリくんの家の前にいた。 ************** ──トントン。 控えめなノックの音がして、 俺は待ちかねていたその音に、 咄嗟にドアに飛びつきそうになる。 だけど、わざと大きく深呼吸を一つして。 ドアの覗き窓から覗いて。 ずっと見たかったその姿を見て、ホッとする。 それからゆっくり扉を開けた。 「……こんな時間にどうしたの?」 そこに立っているのは、 夏のままの恰好をしたリズだった。 「うん。なんかもう、誰も遊んでくれなくて」 ぽつりと言うセリフに俺はため息をつく。 そりゃそうだろう。 何も考えてない奴は、冬は越せない。 遊んでいるように見えて要領のいい奴は ちゃんとそれなりに 冬に備えて準備してるんだ。 だから、リズは馬鹿だって……。 寒そうな恰好をしているリズの向こうで チラチラと白いものが落ち始めている。 「……雪が降ってきたよ。その恰好じゃ寒いよ。 何か温かいものでも飲んでいったら?」 柔らかい笑みを唇に浮かべて言うと、 リズはお人よしだから。 「ありがとう。アリくんって ……やっぱり優しいっ」 縋りつかんばかりの勢いで 俺の後をついてくる。 ──この部屋に一歩入ったら、もう逃げられないのに。 だから、リズ、君はおバカなんだよ。 温かいお茶を淹れて、 暖かい暖炉の前で、 絨毯に座るリズの前に置いてやる。 俺の思惑になんて まるで気づいてないリズは 暖かいカップを両手で包んで、 ほっと安堵の吐息を零した。 「そのお茶、すごく体温まると思うよ」 「うん、甘くておいしい。 ……でもこの部屋、本当に温かいのね。 こんな格好でも、全然寒くない」 「春、夏、秋と一生懸命働いて、 しっかりと冬の準備をしたから、 少しぐらい暖房を多く使っても大丈夫なんだ。 リズは、まだ寒いだろう?」 俺の言葉にリズは ウルウルと瞳を潤ませた。 「アリくん、ありがとう」 (俺には不純な目的があるだけで、 お礼を言われる筋合いもないんだけどさ) なんてことは、一切、言わないけどね。 そして俺はソレの効果が出るのを じっと待っている。 「ねえ……アリくん。 なんか、温かいお茶が効いてきたのかな。 なんだかすごく熱くなってきた……」 ピンクに火照らせた頬に、潤んだ瞳。 チェリーピンクの唇から はぁっと溢れる吐息は色っぽい。 「……クスリが効いてきたかな」 「──え?」 俺の独り言にリズが首を傾げる。 サラリと金色の髪が 肩から前へ、滑り落ちていく。 「暑くなってきたの? 外が寒かったから、 風邪ひいちゃったのかも? ベッドで少し横になったらいいよ」 そういうと、俺はリズを抱き上げて、 そのまま自分のベッドに連れていく。 「アリくんの……ベッド?」 「うん、ゆっくり横になったら楽になるよ」 大分クスリが効いているらしい。 ぽわんとした表情のリズは、 めちゃくちゃ色っぽくて可愛い。 「アリくんのベッド、大きくて豪華なんだね」 「うん、新しいの、買ったからね」 リズは一冬ずっと、 ここの上で過ごす予定だからね。 俺と。 ……エッチなコト、イッパイしようね。 ベッドにリズを横たわらせると、 薔薇色の頬に指を滑らせる。 その肌の滑らかさと熱っぽさに、 一瞬で血液が下半身に流れ込むのを感じながら、 艶々でヤラシイ、リズの唇にキスをする。
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