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第2話 ある夏の日のリズちゃん視点

アリ君が冷たい目をしている。 おかしいな。 こんなに派手でエロい恰好してるのに。 思いっきり脚だって出しているし。 他の男の子だったら、ヘラヘラ嬉しそうに笑って 『めっちゃエロい』って絶対、褒めてくれるのに。 それに、ちょっと恥ずかしいけど、 わざと胸を強調しているチビTシャツ。 小さすぎて、おへそとかちらっと見えちゃうの。 でも女子からは、そこがエロカワイイって 褒めてもらったんだけどなぁ。 ねえ、アリ君。 私のこと、ちょっとぐらい女の子として、 興味を持ってくれたりはしない? 「だからアリの奴はダメなんだよ」 黒髪に、黒い瞳をして、黒い眼鏡を掛けて、 黒い服を着ているアリ君のことを、 みんな『面白くない奴』『陰気な奴』 っていう。 でも私は知っている。 アリ君が凄く賢くて、世界の事とか、 いろんなことを一杯、知ってて。 ……わからないことを聞くと、 優しい笑顔を浮かべて、 親切に教えてくれるのを。 正直、教えてくれることは ちょっと難しすぎてよくわかんないけど。 でも、それでも。 『そっか。わかりにくかった? ごめんね、もう一度最初から説明するね』 優しく教えてくれるアリ君が好き。 みんな知らないの。 本当のアリ君はチョー素敵で クールでカッコいいの。 私だけが知っているの。 だけど、最近、アリ君は冷たい。 いつだってお仕事ばっかりしている。 私の事なんて完全無視。 きっと、おバカな私の事なんて 興味ないのかも。 だけどね。 パメラが教えてくれたの。 気になる子が、振り向いてくれない時に どうしたらいいのかって。 『ヤキモチ妬かせたらいいよ。 その男の子の前で、他の男の子と イチャイチャしたら、絶対気になるって。 そいつと仲良くすんなよ、とか 言ってくるにきまってる。 だって、リズ、すっごく可愛いもん。 好きにならない男の子なんて絶対いないよ? ──で、その男の子は誰なの?』 当然、必死に誤魔化したけど。 だって……万が一、 アリ君本人にバレたら、 恥ずかしすぎて死んじゃう。 「リズ~。こっちに来いよ。 今夜も一晩中、踊るんだろ? なんだったらベッドの中でもいいけどよ」 ……だから男の子って嫌い。 すぐえっちなことばっかり言うんだもん。 「えー、やだよぉ。私、踊りたいの。 そういうのがいいんだったら 他の女の子を探してよ~」 唇を尖らせて文句を言うと、 とりなすように私の腰を抱く。 「嘘だよ。俺もリズと一緒に 遊ぶ方がいいもんな。 ……まあ、その気になったら教えて」 また、すぐそういうことを言う。 ……でも、アリ君は 全然そういう風なこと、言ってくれない。 やっぱり私じゃダメ? 「えーーーー。 私、ビッチじゃないんだからね。 好きな子以外に その気になんてならないよーだ」 だって……私が好きなのは。 黒髪黒目、黒眼鏡の、 クールでカッコいいアリ君だけだもん。 アリ君以外は絶対イヤなの。 ************* 今日、アリ君が お仕事をしているところを見てしまった。 アリくんのお仕事先は、大きな通りに面した 大きな窓があるオフィス。 黒いスーツを着て、 さっそうとお仕事しているアリ君は……。 (やっぱり、カッコいい……) なんて思っていたら。 アリ君の席のブースに、 黒いスーツにミニスカート。 細くて長い脚に大人っぽい黒いヒールを履いた 綺麗で頭の良さそうな女の人が来て。 アリ君は嬉しそうな笑顔を見せて、 彼女の持ってきた書類を見ていた。 私になんて全然気づかない。 まあ確かに私は。 アリくんが仕事をしているオフィスの前を、 通り過ぎただけだけど。 (そっか。やっぱり こういう人が好きなんだろうなあ……。 おバカでエロい恰好をしている 女の子なんて、まるっきり興味ないんだ) 「──リズ?」 思わず彼のオフィスの前で 立ち止まってしまった私を 一緒に居た男の子がぎゅって抱きしめた。 「どうしたの? ……え? 泣いてるの?」 「ごめん、なんでもないの」 涙が止まらなくて、おろおろしていたら、 ぎゅって抱きしめられて、 気づいたら、キスされちゃった。 「ダメっ……」 私にはアリ君って人がっ! そう思っていても、男の人の腕は強くて。 気付くと、もっとぎゅって抱きしめられて もう一度、今度は長い時間キスされて。 ようやくその胸を突いて逃げ出せた。 アリ君以外は嫌なのに。 なんで他の男の子ばっかり私に優しいの? ……このえっちな恰好だって、 本当はアリ君にだけ、見て欲しいのに……。
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