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〈第一章・43〉

 蓮は、紙巻を点ける僕の姿を、面白いものでも見るようにニヤニヤと笑いながら眺めている。 「蓮さん」 「うん?」 「いえ、やっぱり、いいです。何でもないです」 「聞きてェんならちゃんと聞けよ、ま、答えるかどうかは俺の気分だけどな。ああ、忘れるところだった。ほら、これがお前さんの部屋の鍵だよ。元が物置きと同じようなもんだから、どうにもせまっ苦しいのは勘弁だ」 「鍵かぁ、ありがとうございます。へえ、格好いい」  アンティーク調のシルバーキーを受け取り、こちらも新しく取りつけられた、複雑なガラス細工がいかにも高価そうに見える照明に照らし、しげしげと眺める。  ひっくり返すと〈Chiaki〉と小さな刻印があった。  悪くない。  けれど、いよいよこれではここが〈自分の部屋〉になってしまいそうだ――いや、それこそ今さらか。 「……。あれ?」 「だから、どうしたよ」  可笑しそうに、蓮はキセルを咥えて火を点ける。  銀の鍵の持ち手、ヘッドの穴から見えた――彼の横顔。  先刻会話をした娘に、とても似ている。  思わずその花姫の名が口をついて出た。 「……すいれん」  僕の呟きに、ぴくりと蓮の顔が跳ね上がった。 「あれに会ったのか」 「ええ。よく似た、もうひとりの花姫さまと一緒でした」 「ああ、あいつらはふたり揃って、ひとりだよ」  蓮は、心なしかうんざりしたような口調で吐き捨てて、あぐらをといて、普通に座り直した。 「蓮、睡蓮……。あれ、同じじゃないですか」 「はは。似てるけどなァ。種類が違うんだ」
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