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〈序・2〉
「って……ぇ」
大男は僕を見下ろしながら両手を払う。
「その身形、若さ。まかり間違っても、おめえは〈招待客〉じゃあねぇな」
「招待客? 何のことだ」
続けざま、痩身の男はくつくつと笑いながら言った。
「これも仕事だ、悪く思ってくれるなよ。今ここで、坊の生命 はお終いだ」
すらり。
痩身の男が、脇に挿していた日本刀を抜いた。
かろうじて悲鳴は飲みこんだ。
しかし、凍りつきこわばる喉元に押しつけられた刃が恐れを膨れ上がらせてゆく。
脅しではないのはすぐに知れた。
奴が漂う、嫌な気配。
これが〈殺気〉というものか。
躊躇いなく抜かれた凶刃。
こちらを見下ろしている黒い瞳からは何の感情も読み取れなかった。
(死ぬのか、僕は、ここで。こんな所で)
ガチガチと奥歯が鳴り始めた。
手が震える。
背すじがそそけ立つ。
「命乞いの作法も持たんか。小童ならば……さもなん」
だるい高校生活を、やっと終了して、二流でもそこそこの大学へ入学したばかりだというのに、こんなところで死ぬのか。
こんな、わけの分からないところで。
命乞いが、なんだって?
意味が分からない。
恐くて刀から目が離せない。
斬られたら、どのくらい痛いのだろう。
それとも、痛みすら感じないだろうか。
死んだことすら気づかないまま、みっともなく花の上に転げて腐りゆくのだろうか。
「待て」
怯え、震える僕――いや。男達に向かってだろうか。
琴の音のように響く美しい声が殺気をかき消した。
場にたちこめた毒気が抜ける。
「しかし、胡蝶蘭 さま」
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